第9話
「君のその服装は、ここの学生の制服かい?」
石造りの広い建物を歩く中でドーリーは女性にそう聞いた。
壁から天井まで石づくり、床には高そうなカーペット、壁には神やそれに仕える聖職者たちが書かれた宗教画。
「はい。我が第三女学園の制服です」
確かに三人とすれ違う生徒たちも同様の服を着ている。下はスカートとズボンを選べるようだ。
「女子学生の制服としては随分と厳つい制服じゃないか。それ、腰に剣でも吊るしたら聖騎士団の服装だろう」
「えぇ、今でも正式な式典では正装として剣か長杖を持つことになってますね」
帝国では宗教諸派が限定的ながら司法権などの自治権を所有していた時代がある。そのころ宗教組織の私兵として組織されたのが聖騎士団だ。
現在は皇帝に俗世の権力を取り上げられたため廃止している組織が多いが、宗派によっては慣例的に聖騎士団という名称の組織を作り組織内の風紀取り締まりや伝統的な行事などを行っている。
「ここって比較的新しい無宗派の学校でしょう?なぜ聖騎士団なんですか?」
「もともと本学の校舎は今は名前も忘れられている宗派の男子向けの修道会として使われていたものですが、修道会は時代の波の中に縮小傾向となっていました。そこで学校再編成により他の宗教学校と統合され、空いた施設に時の皇帝の配慮により新しく新時代を担う女子生徒向けの学校を作ったというのが学校の発祥であり、その際にその宗派がここを明け渡す唯一の条件が、古くからの伝統的であるこの制服だけは残していくことということでした。ですから現在に至るまでこの制服になっていると聞いております」
「よく勉強してるね」
Vはそう言った。学校の歴史をペラペラと解説できる生徒というのは珍しい。何か学内での役職付きか、もしくは相当優秀なのだろう。
「歴史はわかったから君の意見を聞こう。その制服、正直どう思う?」
ドーリーの意外な方向からの質問に生徒はすこし考え、品の良い笑い顔で答えた。
「入学して数か月はカッコいいって思ってましたけど、慣れてみるともっとかわいい制服がいいなって思いますね。それにこれトイレに行くときとか大変なんです。先生には言わないでくださいよ」
それを聞いた二人は笑った。
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