第10話

「職員室がこちらです」

「わざわざありがとう」

「いえ、とんでもありません」

 そう言った会話をして二人の前から去っていく生徒。

「失礼」

 そう言ってドーリーを先頭に部屋の中に入っていく。


中は今まで通った廊下と違い極めて質素で実践的なつくり、ただ部屋の形が真四角ではなく妙な形をしている。

「何かご用ですか?」

二人を確認した一番手前の席の大人の男がそう聞いた。おそらく下っ端か新人でここで受付もやるんだろうな、とはドーリーの想像。

「えぇっとですね、明後日から行う講習について組合、いや冒険者業組合の方から派遣されてきました。ご挨拶にと来たのですが、担当の方はどなたでしょうか?」

「あ、はいはい。こちらにどうぞ」

 そう言って二人を部屋の片隅に置かれたソファー連れて行った。


「いや、すいません。わざわざどうも」

 出てきたのはどこにでもいそうな中年の男だった。特徴といえば禿げてることだけ。

「この度はご依頼していただき」

「いえいえ、毎年恒例のことですから、今更そういうのは結構」

 気がよさそうなおじさん、という感じで朗らかに笑っている。

「でも自己紹介だけはしておきましょうか、私は本学で教頭をやってます」

「俺はドーリーだ。冒険者で登録ジョブは剣士」

「私はヴィリアです。同じく冒険者で登録ジョブは魔法使い」

 よろしく、と握手など交わす。

 そして細かな相談が続く。



 えぇ、まず一応再確認ですがこの度おふた方にお願いしたいのは、冒険者という魔法を実戦で使う方の運用方法を生徒たちに教えてほしいというものです。

 教科書に書いてないことを教えてほしい、という訳ではありませんが学校では習わない運用面での工夫などについて生徒に教えてほしいですね。

 講習時間は昼前の一単元のみです。これを5日間。つまり週末までですね。基本希望制ですので生徒の数は多くないです。今の所希望している生徒は20人ほどですが、希望者は順次受け入れてますので増減があるかもしれません。

 報酬については最終日にまとめてお渡しします。現金でよろしいですか?債券という方法も、はい、現金で。


「テストみたいなものを作る必要はありますか?」


 いえ、そういったことは大丈夫です。基本的に希望制の講習ですから、事情があれば途中からやめても問題ない、というくらいなものです。

 ですからそこまで硬くならなくても大丈夫ですよ。

 講習の内容についてですが、えっと、どのような魔法についてお話しますか。


「私の専門は回復系ですからそちらの運用について、具体的には、何にしましょう?」

「冒険者業界でよく使うといえば、腕や指をつなげるあれじゃないか。ビジュアル的にわかりやすいし、話すことはいっぱいあるだろ」

「そうですね、まずはそちらから始めましょうか」


 あぁ、医療系の魔法としては定番ですから、ちょうどいいでしょう。

 具体的な内容は。


 そう言った話し合いが約40分ほど行われたが、さほど面白くないのでここから先は省略する。

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