第8話
「ここですかね」
適度な間隔を開けていくつも並ぶ石造りの建物の一つ、その前でVはそう
「あなたたち。学内は関係者以外立ち入り禁止ですよ」
「え、あ、そのですね」
言った所で一人の女性に声をかけられる。
服装は黒いジャケットを金ボタンで留めた物に黒いズボン、そして黒いロングコートを質素なベルトで止めたもの。年齢はVよりも年下の金髪。
「いや申し訳ない。ここは第三女学園で正しいかな」
「そうですが」
「明日、いや明後日だな。明後日からこちらの学校で魔法についての講習を行うことになっている冒険者二人なんだが、その旨でまず事前にご挨拶と連絡、ご相談をとやってきた次第というわけだ。責任者の方とお話ししたいんだが、どこに行けば会えるかな」
女性はドーリーとVをじろじろと見る。
服装としては小ぎれい、ただどう見ても庶民。特にドーリーは魔法など使いそうにないし服で隠し切れない大きな傷も見える。
連れて行っていいものか。礼儀知らずを承知でまたせておくべきか。
「いや、いきなり来た私たちをあなたが疑うのは実に正しい。というわけで、おい、何か見せろよ。魔法使いらしい所をさ」
「何かってのも困るんですが」
そう言ってVは手を刷り込みながら魔法を唱えた。
そして手を泥団子を作る要領で動かす。
「これでどうでしょうか?」
そして手を離すと手のひら大のボールが出てきた。それを地面に二回ほど弾ませて手でキャッチ。
「なんですか?それ」
「特に意味はありません。魔法で作ったボールです」
そう言って三回目は上に放り投げて、簡単な呪文を唱える、そうするとボールは落下しながら色が薄くなっていき、地面に落ちると同時に消え去った。
この魔法は本当に意味も目的もない。
かなり簡単なので、一部地方では子供の魔法の才能や適性を図ったりすることに使われるが、別にこの魔法じゃないとだめだというわけじゃないし、その目的であればもっと適切な魔法もある。
一方で「簡単にできる魔法ではこんなのがあるよ」や「こういう魔法があるが目的はわからないよ」という講習や授業の際の雑談や実演にはちょうどいい手ごろな魔法でもあるので、魔法使い界隈では結構広く知られている。
Vは目の前でボールが表れて消える、という現象は「いかにも魔法使い」という感じがするし失敗しても誰かの腕が吹き飛ぶなどということはないので、誰かに魔法を見せるときに使うことにしている。
この現象を見た女性は魔法使いであるということは納得した様子。なのでVは重ねて
「彼は戦闘職なので魔法を使いませんが、傭兵団の勤務経験があるのでそう言った大規模な組織での運用についても話せます」
「まぁ今回は助手ってやつだよ」
とドーリ。
その二人を見て、冒険者だしな、と思い直した女性は
「ではどうぞ。ご案内します」
と二人を連れて建物の中に入っていった。
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