第7話
「これが学校ねぇ。でかいなぁ」
第三女学園を前にしたドーリーはそんなことを言った。
目の前には貴族のお屋敷のような建物がいくつも並んでいる。ドーリーが見積もった限り全部合わせれば田舎の騎士団の駐屯地くらいはあるというコメント。
「一校だけじゃありませんからね」
この区画には5歳から18歳までの生徒が複数の学校に分かれて集まっている。
ここは帝国の教育モデルとして大戦後に整備された教育区画だ。
将来的には帝国の各地の主要都市に同様の区画を作り、その地域の教育を担う地域とするという目標の元、首都に存在した各種学校の再編成と新規開校が行われてこの区画ができた。
ちなみにこの計画が始まってから80年近くになるが、首都以外の帝国各地に同様の区画が整備される気配はない。開発が進まないのは主に予算と既得権益の問題。
「へぇ、俺は学校なんか縁がない人生だからな。なんも知らねぇや」
「どこで読み書きを習ったんです」
昨日のうちに受付嬢が調べてくれた(組合からの指名という形なので組合の支援も手厚い)地図を見ながらVは聞いた。
「貴族様のお慈悲ってやつさ。近所にあった屋敷で貴族様にならったのが最初で、あとは傭兵団で習ったり、世話になってた女に習ったりかね」
ドーリーのような学歴は庶民としては珍しいものではない。むしろこういう学校で一から学問を習う庶民の方が珍しい。
特にここはエリート系の学校が集まるハイクラスな区画。貴族や役人、金持ち商人や王族に皇族などがたくさんいる。
「Vは学校に行ってたんだろ?」
「ここじゃありませんけどね。それに中退で今じゃ冒険者だ。自慢にもならない」
そう言って地図で場所を確認して、ドーリーに付いてくるように言った。
じゃんけんで負けた結果だ。
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