第6話

「二人ですか?」

「そうだ。向こうからの依頼は実戦で活躍する冒険者に実戦での魔法の使い方の例を見せてほしいというものだ。だから組合所属の講師ではだめだ」

「まぁ、そういう事なら」

「では承諾という事でいいか」

「条件を確認してから返答したいが」

「なら今確認しろ」

 ドーリーは言われた通り書類を読む。

 Vも同じ様に読むが、意味が分からない。役人が使う独特で曖昧で責任回避を目指した言い回しが並ぶ。

 ドーリーは傭兵団の中でこういった難解な文書はどう読めばいいのか、正確には「どこを読まなくていいのか」「聞いたことがない無意味に難解な言い回しの意味」などを覚えてきた。なのでVよりも早く解読ができる。

「まぁ、悪くはないかな。経費と足代はでる、報酬は高いとは言えないが危険はないし役所の仕事なんてこんなもんだろう」

 ドーリーは総評としてVにそう言って、報酬額などを教えた。

「今回のメインはお前でおれは数合わせ。まぁおまけだ。お前が断るなら俺も断るよ」

 ドーリーもVも今までの会話で何となくそれを理解している。


 おそらく学園側の要望は「実戦で働く冒険者たちに現場での魔法の運用方法を聞きたい」というものだろう。つまり好ましいのは昨今流行りのパーティー型の冒険者による実践に基づく経験談や運用方法のコツ。

 また組合としては中途半端、というより質が悪い連中は組合の名前に傷がつくから出せない。できれば冒険者の知名度と信用度向上の為に1流を行かせたい。

 が、そうなると報酬も高いし、組合として任せたい仕事はもっとある。

 なので次点として臨時パーティーを組んだ実績があり、なおかつ村から良い報告を受けているらしく、学校中退という学歴もまぁある方のVと数合わせのドーリという二人が選ばれた、というわけだろうとはドーリーが帰り際に受付嬢にしゃべった話。


 受付嬢は後日、この話について組合内部の報告書をみて「ほとんど当ててる。すごい」という感想を漏らすことになる。


「うーん、まぁいい仕事のあてがあるわけでもないし、いいですよ」

「なら俺も」

 そう言って二人は渡された書類の最後にサイン。これで契約成立。

 組合長はそれと引き換えに手紙を渡し

「明日、明後日と準備期間が設定されているから学校の方で挨拶をするように。これが紹介状だ。場所はわかるな」

「どこでしたっけ」

「受付に聞け」

そういった会話をして部屋から出て行った。

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