第5話

組合長室

「ヴィリアさんとドーリーさんをお連れしました」

 そう言って部屋の前で止まる受付嬢。

「入れ」

 その声に合わせて受付嬢は目で合図。私は入りたくないわ。という意思が見てわかる。

「失礼します」

 ヴィリアもドーリーも用はないのに入りたくない。が呼ばれた手前そういうわけにはいかない。


 首都の組合本部で組合長と呼んだ場合、冒険者業組合首都地域組合長のことを指す。

 帝国の各地域に似たような長がいるわけだが、首都の組合長は出世コース。だから偉そうなやつか偉いやつがなる。だからVやドーリー、あと受付嬢のような出世欲がない下っ端はあんまり関わりたくない。


 組合長室はちぐはぐに豪華だった。

 広い実務的な部屋に、無駄に豪華な椅子と来客用のソファー、飾られているものは趣味がいいのかわるいのか判断しかねるが高いのは確かだろうという美術品の類。

 ドーリーが言う所では「田舎の悪趣味な小役人の部屋」という感じ。

「何か御用ですか」

 組合長については「嫌味な役人」というのが受付嬢の意見。

「まぁ座れ」

 そう言われて来客用のソファーに座る二人。

「面倒なことは省いて簡単にいきたい。組合から直接指名という事で君たちに依頼を出したい」

「Vについてはわかりますが、俺にでもですか」

 つい先日組合に入った新人であるドーリーが言った。

「最後まで聞け。業務内容は首都第三女学園の臨時特別教員として1週間の間授業を行う事だ。報酬、条件などはこの書類に書いてあるからこれを読め」

「特別教員、って学校の先生をやれってことか?」

「違う」

「教師というか講師ですね。ドーリーさんも基礎試験で講習受けたでしょ。あれですよ」

 あぁ、とドーリーは納得する。組合長は追加で説明。


「講習の内容は1日1単元、1週間の短期講習だ。講習の内容は実践における魔法の活用方法、内容については特段指定はないが事前に相談し承諾を得ることと。また組合からの指示として、冒険者業界の顔として恥じることがない行動を心がけること」

 そして追加し

「本来であれば、君たちのような2流冒険者ではなく1流のパーティーを派遣するところだが彼らに自分たちの仕事があるからな」

と言わなくても良いことを言った。こういう所が「嫌味な役人」と部下に嫌われる原因の一つ。

「しかしそのテーマなら俺より適任者はいるでしょう。Vと違って魔法なんか使えませんよ」

「トラブルなど起こさないと判断できる人間は現在君たちしかいないのだよ。君ら二人が受けた先の依頼で村から良い評価を得ているし、その後個別の臨時パーティーにおいてトラブルに対して的確に対応していると報告を受けているからな」

「それはどうも」

 一応でも評価されている、とドーリーは判断してそう返したが、Vは別のことを考えていた。

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