頭蓋骨を捜せ

「ねぇ、まだ見つからないの?」

 彼女の声が直接頭に届いた。振り返ると、彼女は形の崩れた頭を両手で支えて、フェンスに寄りかかって座っている。

「まだに決まってんだろ」

 ここは骨男爵の庭と言われる広い草原。このどこかに骨男爵の奪った骨はあるはずだけれど、草しか見えない。

「てかさー、なんで俺が捜さなきゃならないわけ? よくわかんない男に付いて行くおまえが悪いんじゃねぇかよ」

「だってぇ、カッコよかったんだもん」

 うっとりとした甘い声が届く。頭にきた俺は、彼女の横のフェンスを蹴った。

「馬鹿じゃねぇの。やってらんねぇ。自分で捜せよな」

 そして、彼女の隣りに座る。

「じゃあ、あんたの骨貸してよ。自分で捜すから」

 彼女はふよんと顔の肉を揺らして、たぶん笑った。

「断る」

「何よ。キスしてやるって言ってんじゃない」

 体を引いた俺に体当たりするようにして、彼女は自分の唇を俺の唇に押し当てる。ぐっと吸い込んで、俺の頭蓋骨を抜き取った。

「ちょっと違和感あるけど、仕方ないか」

 彼女はそう言って、いつもと少しずれた顔で笑う。俺は柔らかくなった頭を両手で支え、「早く返せよな」と声を送った。

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はしばし 葉原あきよ @oakiyo

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