僕たちは、珍獣ではありません
月影たちの近くにいた数人の官吏が、会話を再開した。
「青家の者が、白家の者と仲良くしているぞ」
「おいおい。どういう風の吹き回しか?」
「わしにはさっぱりわからん…………」
彼らは、ちらちらと、自分と柳桂に目を向けながら話をする。
そんなに、珀本家出身の僕と、青宗家出身の柳桂の組み合わせはおかしいのですか……?
月影は、思わず首を傾げた。
それに。
ひそひそと言っているつもりかもしれませんが、こちらにもすべてしっかり、聞こえてますよ――――。
月影は、それこそ声を大にして、言ってやりたかった。
しかし、それができない彼は、隣にいる柳桂に話しかけることで、居心地の悪さをなくそうとした。
「…………なんか僕たち、注目されているね」
「まあ、仕方がないよ。簡単に言ってしまえば、品定めってところかな? でも大多数の人は、見学者、つまり
一種の救いを求めるように見た柳桂は、どこかひょうひょうとした口調で答えた。
「野次馬?」
月影は、首を傾げた。
それにしては、人が多すぎるように思えてならないが。
「そうそう。野次馬がこんなに多いから、
「そ、そんなぁ~~」
あまり知りたくない現実を思い知らされたような気がした月影は、頭を抱えたくなった。
何だよそれ…………。
「まあ、あきらめなさい。ここに来た以上、これくらいは当たり前だと開き直った方が、楽になるよ」
柳桂は、どこまでもさばさばとしていた。
こんな衆人環視の状態でも、冷静に物事を観察し、考察できるらしい。
「柳桂…………」
月影は、そろりそろりと、下から上に首を上げた。いっそ清々しいほど涼しい表情をした柳桂の顔を、恨めしそうに見上げる。
「ん? 何だい?」
それに、柳桂は何かと問いかける。
月影は、素朴な疑問を投げかけた。
「なぜ君は、そんなに落ち着いてられるの?」
そんな月影の言葉に周りを見渡しながら、何てことはない、という風に、柳桂は言った。
「それはねぇ…………。慣れているのさ。注目されることに関してはね。もともと僕は、青宗家当主の息子だから、必然的に表舞台に出ることも、多くなる。まあ、こういうのもある程度場数を踏めば、その内慣れてくるもんだよ」
「そうなんだ…………」
聞くんじゃなかった…………、と月影は思った。それは、僕には一生達することのできない境地であろう。
事実、かなりよゆうな顔をして、周囲を眺めている時点で、柳桂に勝てるわけがない(別に勝負をしているわけではないので、構わないが)。
心なしか落ち込んで、がっくりと肩を落としているように見える月影のことが、気の毒になったのだろう。
柳桂は、月影にあることを確認した。
「君は…………。確か、
「? …………はい、そうだけれど」
月影、いきなりの問いに、頭に疑問符を浮かべながら答える。
「なら、良い意味でも、悪い意味でも世間慣れしていないね。どちらかといったら、こんな公の場に出るのも、初めてだろう? ここも一種の、社交の場だからね~。初めてさんには、少しばかり、大変かもしれない」
そこまで言い切ると、柳桂はいたずらっ子のように笑った。
「………………が、がんばります?」
月影は、とてつもなく落ちこんだ気持ちを何とか上向きにしようと、努力していたのであった。
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