四章

風伯の旅、再び


 風の主人である白虎神との会話を終えたあと。

 風伯ふうはくこと風は、再び雪空をけていた。

 びゅうびゅうと吹く北風が、風の身を揺らす。

 それは、人形じんけいのままである今の風の身にみるが、不思議と嫌な気持ちにはならなかった。

 そのまま、彼は薄暗いあかつきの空を行く。

 やがて、大きな河が見えてきた。

 そのかわは、太古の昔からこの花国の大地を潤してきた。それと同時に、たまに大雨で堤防が決壊し、洪水が起こることもある。

 そのためか、河の岸辺には、いくつものほこらが点在していた。

 風は、眼下から望む大河の両岸を見る。

 しばらくすると。

 風は、ある祠に目をとめた。

 それは、人の多く住む街から、少し外れたところにあった。それ故に、もともと供え物の数は多くない。

 しかし、いつも、定期的に誰かが清掃を行っているのだろう。祠の周りはこじんまりとしながらも、さっぱりとした印象を与える。

 そんな、穏やかな人里の近くにある、ごく普通の祠だ。

 風は、祠のすぐそばにいるひとりの男の姿を認めると。緩やかに下降を始めた。


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