〈勝利の合奏〉
――ザザザザザ
――ぶはあぁーっ! ゲホゲホ!
日本橋の残骸がゴロゴロと無数に散らばる河原で一命を取り留めた正三。手には無意識に銀のダガーを握っていた。
ヴェェエエ…… うわあっ!
正三はすぐ横にいた死に損ないゾンビを倒した後、周りを見渡した。
「……ゾンビの死体だらけ。ここは地獄…… じゃないよ、ね。本当に幸運のお守りだな。このダガー」 正三は生き延びた事を確認した。
びしょ濡れのまま夜の河原を走り江戸の町中へと戻る。
その頃、将軍綱吉は生きた者達を熱い眼差しで見送った後、幕府軍を率い戦いの後始末に大忙しであった。
「上様~っ! 正三様が! 生きておられました~っ!」
その言葉に安堵した綱吉は正三と合流し、事後の経緯を伝えたのであった――
◇
街道から山道へと入って行く一行。
「皆! 目的地はこの山の中腹なのだ!」 ご隠居が皆に伝える。
「ようし! いよいよ大詰めだ! みんな足並み合わせて演奏しよう!」 正三がそう言うと後方の不気味な光景とは不釣合な程の団結した爽快な 【合奏】 が始まった!
嵐は去り雲ひとつない晴れ間が広がる。心地よい一体化したリズムに合わせ草木も踊る。
木々が生い茂る山道を難なく行進した先。
パッとひらけた場所にドカン! と大きく口を開けた巨大な空洞が姿を現した!
――「よう頑張ったのだ! あの穴にゾンビを誘い込むのだ~っ!」
「ひょえ~! 城がすっぽり入りそうな穴っスね」
「ふむ。何故このような掘削工事を進めていたでござろうか?」 助さん格さんは戸惑いながら先に大きく広がった空洞を見た。
「演奏を続けながら穴の横に広がるんだ! 落っこちないように!」 正三が指示を出す。
ゾンビ共が空洞まで近寄ると幕府軍と赤穂浪士達は槍で次々とゾンビを落としていく。
ある程度のゾンビを穴へと落として行くと残りのゾンビは殆ど自分から自動的に穴の中へと落ちて行った。
巨大な空洞にウネウネと動く無数のゾンビの塊。低いうめき声が響く。
――「なんとか全部入りきれましたね」 杏音は言った。
「我々の勝利なのだ! ゾンビを埋めて終いじゃーっ!」
ウオオォーーっ!
こうして江戸の危機は去った。
歓声は止むことなく皆は肩を寄せ合い喜びあった。
……その場から静かに去る一人の男を除いて
「う~ん。空が眩しいねえ…… NO FUTURE だなあ」
トウイチは、目を開き呟いた。
【赤目】 を見開き呟いた……
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