〈日本橋の戦い 壱〉

 無数の足音をかき消す豪雨の中、ゾンビ共との全面戦争が突如始まった!


赤穂浪士達は馬にまたがり次々にゾンビをなぎ倒して行く!

切死端の民は空っぽの屋内に入りこみ、そこから銃撃を繰り出す!

忍達は縦横無尽に忍者刀を振り回す!


「優勢! 優勢! ぶった斬るっス!」


「油断大敵! 同士討ちには用心するでござるぞ!」


「姫! 散弾ト火薬の補充ヲ!」


「ありがとう! グレン!」


「一体誰が天海様を!」


「オレに近づくなよ正三! 間違って斬っちまうぞ!」


それぞれは一心不乱にゾンビの群れを倒して行く!


――ガガガガ! ドォーン!

後方で耳をつんざく大砲の発射音が聞こえた!


「ご隠居さん!」 正三は槍を振り回しながら言う。

ご隠居は雨風をもろともしない大砲が備え付けられた屋根付きの改造馬車。まさに移動要塞から指揮を執る!


「まだまだなのだ! 綱吉~! 銀子~!」


――ドォーン! ドォーン!

「殺ってやるわよ!」


「二撃目用意でありんす!」

三台の改造馬車から発射された大砲は一気に複数のゾンビを吹っ飛ばした!


「それにしても数が多すぎるでござる」 格さんはゾンビの群れの中で攻撃を続ける。


――「Hey! ブラザー! アイム スケダチ!」 


「ドミニコ殿! これは鬼に金棒でござる!」 二人は力でねじ伏せる!


 屋内に潜み銃撃を繰り返す切死端の民。


――ガルル!

突如ゾンビの群れの中から牙をむく無数の黒妖犬が現れた!


「ヘルハウンドを優先シて仕留めヨ!」 グレンが大きく叫んだ!


複数の散弾が火を放ち、それらを仕留めたが数匹は狡猾な動きで杏音に襲い掛かった!


――シュパッ!

ギャイン!

黒妖犬の頭に勢いよく手裏剣が刺さる! 杏音はそれが飛んで来た家屋の屋根を見た。そこには闇に紛れるハットリの姿。


「小娘! 忍術を習得する気はないざんすか?」


バァーン!

「ありがとう! ネズミさん! 考えておきますね」 杏音は残る数匹の黒妖犬を銃で仕留め言った。


「残念ざんす。良い上忍になれると思ったざんすがねえ」


 生きた者達の血と汗のにおい。死んだ者達の腐敗臭。それらは豪雨によって浄化される。

修羅場と化した戦場は生きた者達の優勢…… かのように思えたが事態は急展開する……



――「不覚ざんす!」

ハットリの足首に喰らいつく一匹の黒妖犬……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る