〈母の形見〉
――武器庫
村外れの古びた建物。隠されたそれらは地下にあった。大量の銃火器に爆薬、西洋の刀剣、戦斧等がずらりと並んでいる。
火薬と鉄のにおいが混じり合うその一室で杏音は出発前のチェックをする。
「うわあ! これは噂に聞く火縄銃とか種子島とか言う物ですね!」 正三は目を丸くして言う。
「ここには最新式の西洋銃もあるんですよ」
杏音は、せっせと手を動かしながら言う。
その時、手を滑らせ大型銃が机から落ち、しゃがむ杏音。
――カン
「杏音さん、その変わった首飾りは何?」 しゃがんだ際に胸元の首飾りが机に当たった様だ。
「これはロザリヨ。えっと、数珠ですね。本当は首にかけるものではないんですが。母の形見です」
「……そうだったんだ」
「母は私がまだ幼い頃、西洋の地で異端教団によって殺害されました」
「西洋の異端教団が……」
「母の死後、異端教団との対立がより一層激化し父は私の身を案じ母の祖国。この地へ。 祖父の元へ託しました。 ――正三さんのご両親は?」
「僕の親は昔、山賊に襲われて両方死んじまった。 ――そう言えばトウイチさんとも、そんな話したっけなあ」
――「トウイチさん、何だか変わった不思議な方ですね」
「そうだよね。まったく空気が読めないって言うかさ。あ、でも、そうとう凄い刀の腕前なんだよ。エンゲルが来た日の夜なんてさ、ゾンビの首をスパっと――」
「……」
「……知ってたのかな? そう言えば聞いてなかったな」
「心強い味方に変わりありませんからね。是非! よろしくお願いします」
「今度聞いとくよ。よろしくね」
薄暗い武器庫で正三は遅くまで杏音の作業を手伝う。
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