――樹海―― 〈秘境へ〉
「街道をそれて樹海の中に入ってますけど…… 杏音さんの村はこの先に?」 正三はトウイチの歩く手助けをしながら言う。
「はい。申し訳ありません。これでも安全な道を選んで進んでいます」
「何処をどう歩いているのかもう分けが分からんのだ」
「ここは富士の樹海。一度迷えば生きては出られません」
「ちょっとアナタ! こんな所に連れて来といて何でありんす!」 ご隠居と銀子は手を握る。
「私と一緒なら大丈夫。迷う事はありません。私の村。秘境にご案内します」
「秘境がこの先に、まことでござるか? ――しかし杏音殿、急ぎ江戸へ向かわずとも大丈夫な理由を聞きたいでござる」
「はい。村の長の古くからの友人が江戸全体に風水で結界を張っています。
【
「存灯…… お姉ちゃんの所ではゾンビってんだ? 何か色々知ってそうだな、話してもらおうか?」 トウイチは眉間にしわを寄せ言う。
「私の住む村、秘境の民は元々西洋より、この地に渡りゾンビやこの世ならざるものを狩る事を生業としてきた 【
「えっ! キリシタンって幕府が禁教令を出してるキリスト教の事ですか!?」 正三は目を丸くして問う。
「はい。表向きはキリスト教の布教ですが、私の祖国、西洋の国ではゾンビやこの世ならざるものが古くより人々を苦しめています。そこで立ち上がったのが切死端。ゾンビハンターです」
「ドクターエンゲル……」 正三は呟く。
「やっぱり…… その男が来ましたか。情報は出島の者より入手してはいましたが」 杏音は悔しそうに語る。
「幕府により弾圧を受ける隠れキリシタンでござるな」 格さんはご隠居を眺め複雑な心境で言う。
「もともと仏教やキリスト教の価値観の違いなどありません! 現に結界を張って江戸を守ってくれているお方も仏教では大変聡明な方。私達、村の長の友人です。幕府や大名達は、ただただ一方的にキリスト教を…… 私達祖先は誰の為に大勢の命を犠牲にしたか……」
「――余がまだ若かった頃、幕府軍とキリシタンの大きな戦があったのだ。その時のキリスト教の若き最高指導者を――」
「――天草四郎時貞。私の祖父です」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます