第82話 台風の日のこんちゃん(前編)

令和元年10月12日。

こんちゃんは悟りました。

今日は職場に泊まることになる、と。

朝から酷い雨と強風。こんちゃん、県境の橋を渡って通勤するので、その橋が危機的状況になってしまったら、一発アウト。そこから先に進めません。

それなので、泊まれるように道具を持って出勤しました。

レインコート、ダイナモ発電のラジオ、スマートフォンの充電器、懐中電灯、ペンライト、チキンラーメン、チョコレート、ブランケット、眼鏡……etc.

県境の橋は、8時の段階で半分くらい水たまりになっていました。軽自動車のこんちゃんは、もうタイヤを取られそう。水たまりを避けたら、反対車線に入ってしまいました。

で、職場に着きます。車に積みっぱなしのヨガマットも職場に持ち込みました。布団がなければヨガマットに寝ればいいから。



こんちゃんの職場は、デイサービスとサービス付き高齢者向け住宅の併設です。同一敷地内ですが、建物の行き来は一度外に出なければなりません。

雨風激しくなりましたが、施設長指示でご利用者様はデイサービスに移動。……デイサービスをやらないわけにはいかないんです。どうしても、ケアプランとかの関係で。

13時前にデイサービスを終了し、ご利用者様はサービス付き高齢者向け住宅に移動。夕飯まで好きに過ごして頂ければと思っておりましたが、まさかの避難勧告が出てしまい、とりあえずご利用者様を食堂に集めます。車椅子のかたとか、もう動きようがありませんから。

窓ガラスにガムテープを貼り、カーテンも床まで引っ張って下に貼り付け、窓際のテーブルをなるべく内側に。

ご利用者様は「なんでこんなことするの? 大丈夫でしょう」と呑気だったり、プチパニックを起こしてしまったり。

雨風の音は激しかったのですが、ご利用者様は夕飯を食べてお部屋で休むことができました。



ご利用者様はひとまず安心。問題は、職員です。自宅に帰らなくてはならない人がほとんどで、雨の中帰ってゆきます。

こんちゃん、やはり泊まることにしました。翌日は早番だし、ゆっくり寝られてラッキー。くらいに考えておりました。

泊まる旨を親に連絡すると、親から「自宅の地域に避難勧告が出た」と言われました。これは、あかん。帰る場所が危険だ。

施設長から許可は得たので、泊まります。休憩中に洗髪しておいて良かった。

ただし、泊まる場所はデイサービスで。夜勤者の邪魔をしないように、ということだそうで。

うちに泊まれば、と言ってくれた職員もいましたが、断りました。その人、アパートの1階に住んでいる人なので。デイサービスの方が安心なので。

こんちゃん、事務所でチキンラーメンを食べ、雨の中デイサービスに向かいます。


(後半に続きます)

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