第83話 台風の日のこんちゃん(後編) ~おんねんといっしょ!~

デイサービスに泊まることになった、こんちゃん。

実はこのデイサービス、以前からと噂があるのです。

職員は“おんねん”と呼んでいます。ふたつのの音が下がります。ということは、にアクセントがつくのか?(アクセントが苦手)

……そりゃあ、出ますよ。永眠されたかた、いらっしゃいますもの。てか、夜勤しててもサービス付き高齢者向け住宅で出ますもん。やたらに怖がったり、礼を欠かなければ、何もされませんもん。

それなので、「失礼します。一晩泊まらせて頂きます。こんちゃんです」と挨拶してから荷物を置きました。



台風情報を入手したいがため、テレビをつけ、聞いたり見たりしながら、先日の会議の議事録を書いたり、研修報告書を書いたり。

“おんねん”は、普段、物音を出して職員を怖がらせているらしいですが、雨風の音が強すぎて“おんねん”の存在感が薄かったです。浴室で何か喋っていたけど。

仕事の書き物が終わったら、書きかけの小説を執筆。

テレビによると、地元のダムが放水する予定だそう。えらいこっちゃ。職場に泊まって良かった。

日中の疲れもあり、21時に眠たくなって、就寝。一番台風が怖い時間ですが、起きたら荷物を持ってすぐに逃げられるようにしました。

寝るのは、必然的に畳のスペース。

でも、ご利用者様が普段使っている布団は使いたくない(衛生的に)。

それなので、あらかじめ持ってきたヨガマットを敷き、ブランケットをかけて眠りました。

雨風は、なかなかおさまりません。

玄関に、何かがぶつかる音がします。グリーンカーテンのプランターがぶつかっているのかもしれません。翌朝になったら片づけようと思い、こんちゃん、夢の世界へ。



翌朝は、厨房スタッフのピンポンで起きました。タイムカードの打刻がデイにあるんです。申し訳ない。

起床、6時。朝食のお菓子とパンを食べ、またテレビをつけ、着替えたら早番業務開始。もちろん、タイムカードは打刻します。

玄関を開けてその辺を見ましたが、プランターは動いておらず、固いものが飛んできた形跡もなし。

……あの玄関の音は何だったのでしょう?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る