撃退
「説明をしてくれ。ぼくも急いで王都に戻るよ」
「いえ、その必要はありません。オルトさんが全ての情報を整理して作戦を立ててくれました」
「どんな?」
「まず順番に状況説明からしますね」
「ん」
「もっとも初めから説明すると、皇子が子供たちを解散した後、ヒイラギたちは八人のグループを作り、旅に出ました。その目的は当然、美味しい食事ですね。彼らは強敵の情報を探し、王都でも有数のダンジョンに目をつけました。最下層にいる主なら口に合うのではないかと」
当然の理屈だろう。
強さとか、幽霊だとかで旅に出るほうが不自然なくらいだ。
「ですが、ダンジョンの主は彼らの実力では手に負えないレベルでした。全員が大けがを負い、一人だけがダンジョンを抜けて国に助けを求めたのです。その情報がオルトさんに届いたのです」
「彼らはどこのダンジョンに潜ったの?」
「ケセルです」
「ああ」
確か、ベテラン冒険者でも中盤にすらたどり着けないし、年間の死傷者も他のダンジョンより桁外れに多いって報告を受けた覚えがある。
だが、あくまでもダンジョン内の話であり、一般人には被害がないので問題なしと判断していたのだが。
「そして皇子の指示でミュウたちが救援に向かったのですが、当然のように指示に逆らい無理やりヒイラギたちを救助したので主を怒らせてしまったようです。そしてヒイラギたちの救助に成功したミュウたちを追ってダンジョンの主が表に出てしまいました。その時点でオルトさんがミュウたちとコンタクトが取れたので王都に逃げてきなさいと指示を出したのです」
「オルトが?なんで?」
あいつが罪のない一般人に被害が出るような指示を出すわけがない。
「ケセルから王都までの逃走ルートの直線状に皇子のいるフユウ村があるのですよ。つまり……」
「ぼくに何とかしろって言いたいのか」
あいつは自分の主をなんだと思っているのか、一度時間をかけて徹底的に話し合いたいものだ。
「ああ、違うか。白い子にやらせろってこと?」
「はい。皇子は何もしなくても構いません。全部アンナに任せてください。やれますね、アンナ」
「クルギスのためならもちろん構わないけど、どんな相手なのかしら?」
「赤いドラゴンですね。会話ができるほどの知能もあるそうです」
「それはいい」
確かに魔獣にも会話ができることは世界的に認識されている。だが、意思疎通が出来るほどの魔獣は稀だ。
というか稀じゃなければ魔獣と戦うのを嫌がる人間が多く出てしまうだろう。
会話とは一番自分以外の存在と心を通じ合わせる手段だからだ。
「ですが、問答無用で一撃で倒してほしいそうです」
つまり、こちら側にやましいことがあるということだろう。
「ええ、わかったわ。あとどのぐらいでドラゴンはここに来るのかしら?」
「直ぐですね」
アサヒが返答をした後、とてつもない咆哮が響いた。
「村に被害を出すわけにはいかない、離れよう。咆哮が聞こえたんだから上空で姿を確認できる距離にはいるだろう。白い子と行くからイリスはここにいるといい。他の子供が帰ってきたらここにいろって伝えておけ」
ぼくと白い子は宿屋の窓から上空に飛び出し、北東方向に惨劇が広がっているのを目撃した。
人間の被害がないのは幸運だが、その地形には正常な部分がない。陥没したり、大木が燃えていたりする。
だが、攻撃されながらも合計十三人の子供たちが助け合いながら逃げているのを目撃した。
「気になることがあるからぼくは子供たちのところに行ってくる。君はあのトカゲのところに」
「ええ、わかったわ。一撃で仕留めるわね」
白い子は自信満々で赤いドラゴンの所に向かった。
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