第3話。。。そして……きっとあしたは

 気がつくと人魚姫は何処までも続く砂浜に倒れていた。

 波の音に、ふと我に返る。


「ああ、そうだった。わたしは……」


 哀しみはまだ、癒えたわけではないけれど、

 今なら、もう一度、顔を上げて生きていけそうな気がした。


 失くした尾鰭おびれの代わりに、この足がある。


 痛みを伴った足ではなくて、今度こそ大地を踏みしめて歩く為の足。


 そして声が。


 何かを犠牲にして引き換えに得たものでは、真実ほんとうの恋は手に入らなかった。


 どうしたら、真実ほんとうにひとを想うということを知ることができるのだろう。


 もしかしたら、それを知る為に、この足は授けられ、この声は戻されたのかもしれない。


 彼女は立ち上がって、その足で地面の、砂の感覚を確かめるように、一歩、二歩と歩いた。


 それから、ゆっくりと踏みしめるように浜辺を去っていった。



 柔らかい裸足の足裏も、そのうちに厚く力強いものに変わるだろう。

 靴を履くことに慣れ、走る喜びを知った時に……。


 今は寄せてはかえす波だけが、見ていた。


 人魚姫はもう居なくて、そこにはただ、一人の娘の足跡だけが、何処までも砂の上に続いていた。

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