ダンジョンシード&シルバーガーリックペンダント

「快適な異世界ファンタジーを応援してます異世界テレパシーショッピング、ご案内しますのは私、ナナ=ビンテージと」


「クーヘンだよー。帰っていい?」


「ダメです。ところでみなさん、ダンジョンはお好きですか?」


「いきなりだね。でも僕ダンジョン見たことないよ?」


「そうなんです! ワクワクな異世界生活、ファンタジーな世界観でありながら実のところダンジョンの数はそんなに多くありません。あったとしても誰かの管理でしたり、不便な場所にあったり」


「ダンジョンってそういうもんじゃないの? 知らんけど」


「そこで、今回ご紹介しますのがこちらのダンジョンシード! なんと肥料を与えて一週間で! 好きな場所に! ほっとくだけで! あなただけのダンジョンを作ることができるのです!」


「な、なんだってー!」


「口で言ってもわかりにくいと思いますので実を、そのための中継が繋がってます」


「何まだあいつクビにしてないの?」


「はい全部聞こえてるヤスダです。ラーメンデブ殺す。こちらは地下実験場です。隣、マジックミラーの向こう側、実験室Bには肥料として魔法学校から拉致してきた生徒男女五十人が閉じ込めてあります。その中心には見えますかね? ダンジョンシードが据え付けてあります」


「画面暗いよ何やってんだよヤスダ君!」


「光を控えてるんだ黙ってラーメンすすってろ、それでは実験室を、この穴から銃口を突っ込みまして」


 バン!


 ビュシャ!


 キャ!


 ウオ!


 シ、シンデルー!


「はいこの通り銃も知らない連中ですが……動き始めましたね」


 めきゃぁあ。


「え、何々? ストリップ?」


「その生ゴミ捨て穴閉じて見てろデブ」


「ヤスダ君、本番中だから」


 めきゃっっしゃあああああああ!!!


 キャー!


 オレノウデガー!


 コロサレルー!


 バケモダゾー!


「……え、あんな危ないのむき出しでここ置いてるの?」


「はいこちらのダンジョンシード、選び抜かれた吸血鬼七種をブレンドした血液結晶体なんですね。ですから太陽光、紫外線を当てている間は安全に保管ができます。そうでなくても血液が近くになければ活性化いたしません。などと説明ている間に食べ終わったみたいですね」


「うっわーおっきくなって、あれ地下に潜っちゃうよ?」


「それがダンジョンシードの真骨頂、吸血鬼の防衛本能により地下に潜り、地脈のエネルギーと鉱物を集めながら一週間の時間をかけて、何と、ダンジョンを作るのです!」


「な、なんだって!」


「で、その一週間後が?」


「はいこちら実験室Aに移動してます。中には行方不明になった子供を探す両親と魔法学校の教師一同、奥に見えるダンジョン突入前です。あ、入るみたいですね」


 イクゾー!


 オー!


 ドドドド!


 ギャー!


「はい全滅しました」


「えー雑すぎない?」


「これは当然なんだよクーヘン君、このダンジョンシード、一週間経過以降の攻略難易度はアイワナレベル、生半可なチートでは太刀打ちできない難易度なんだ。それがどれくらいか、ヤスダ君」


「え、入るんすか?」


「がんばえー」


「大丈夫、アレあるんでしょ?」


「あーはい、それじゃ、カメラ持ってですね」


「見えるでしょうか? ダンジョン内は魔法の灯りによって明るく保たれてますね。壁や床などは土や岩に見えますが全て、ダンジョンシード、つまりは吸血鬼なんですよ」


「まるで体内だね」


「そうなんです! ダンジョンの犠牲者を貪りより大きく、強く進化していきます! そうして出来上がるダンジョンは同じく経営なさっている方々にも参考になりうると自信を持ってお勧めできます!」


「人のプレイングも勉強になりからね」


「さらに拡張にため、掘り進めた過程で手に入った貴金属は圧縮され、さらに魔力で加工、強力なマジックアイテムとしていわゆる宝箱の中に備蓄していきます。つまり肥料を与えるほどより価値が上がっていくのです!」


「あ、なんか出た」


「形状から見てゴブリン、雑魚ですね」


 ヒュン!


「うぉ! マジか! おい!」


「見てくださいダンジョン初の雑魚でありながら繰り出される数多のスキル! 縮地からの抜拳、からのデンプシーロール、その間にも目からビームが!」


「はやく死ね」


「ですがご安心を、ヤスダ君、アレ」


「うぉ! おら!」


「あら、溶けちゃった」


「こちらが今回ご紹介するもう一点、シルバーガーリックペンダントです! 見た目はただの銀色大蒜首輪ですが、ご覧の通り、このダンジョンシードの吸血鬼に特化した魔除けを付与した、まさにチートツールなんです!」


「あ、壁も溶けてる」


「そうなんです! ただ雑魚を追い払うだけでなく、壁も天井も全部吸血鬼、つまり?」


「壁抜けが可能!」


「それだけじゃないんです! ヤスダ君、そのままでいて」


「こう? お、おぉおおおおおお!!!」


「そうです! どうです! 床も抜けて一気に最下層まで! 一直線です!」


 ドシャ!


「まさにショートカット! RTAなチートスピード! ただし着地にはご注意を!」


「……先に言えって」


「あ、ペンダント外さないで、そこのレベルだと外した瞬間壁がマッハで迫ってきて一瞬でペチャンコなりますので、先に言ったよ」


「それはどうも社長」


「さて、今見えているのがこのダンジョンの核、コアです」


「うわぁ、なんか、ジャガイモみたいになってるねー」


「そうなんです。このダンジョンシード、一定以上の血液を摂取しますとこのように増殖します。もちろんこれを他に植えれば同じようにダンジョンが出来上がります」


「やった無限ループこれは勝った!」


「そう! それ故に、このダンジョンシード、お値段、実質無料です!」


「な、なんだってー!」


「正確には完成したダンジョンに月に一度、合計五十回、あるいはダンジョンシードを百個、収穫させて頂ければ、それでお支払い終了です!」


「それじゃあ買ったもの勝ちじゃないかー!」


「そうなんです! ですがこのお値段でのお取引はまだ数が揃っていない今だから! 今だから限定なのです!」


「…………おい。どうやって出るんだ?」


「ヤスダ君、今いいところだから後で」


「いやおい、床も壁も階段も溶けて登れねーんだよ! 外したら死ぬんだろ! 外さないでどーやってこっから」ブチ。


「早いもの勝ちです! 今! 今すぐご注文を!」

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