おしゃべりビーンズ
「やってまいりました異世界テレパシーショッピング! 今回もご案内しますは私、ナナ=ビンテージです」
「クーヘンだよー。いきなりだけど新しいパックの話なんだけどさぁ」
「それは後で、ところでみなさん、異世界に来て真っ先に困ったことは何ですか?」
「そりゃ新しいパックだよ。ただでさえ連鎖でブッパした方が有利だってのに一発逆転の全体除去禁止にしてカウンター増やすとか頭おかしいよ。また株式総会で泣きながら謝ることになるってのにデザイナーは進化しないもんだね」
「……はいこのように見慣れぬ異世界、その中でもいきなり召喚された方は、言葉が通じないことにと戸惑ってるのではないでしょうか?」
「ちょっと話しちゃんと聞いてよ。これはゲーム史に残るような大失敗で」
「そんなあなたに! 今回ご紹介いたしますのはこちら! おしゃべりビーンズです!」
「いただきまーす!」
バシ!
「何すんのさ痛いじゃないか!」
「えーー、今日のクーヘン君はいつにも増して自由だね。だけどこれはダメなんだ。こちら、山盛りの緑色のお豆、これは相手に食べさせて効果を発揮するものです。実演としてこちらを用意してみました」
「目を覚まして下さい女神様! あなたは自身のお役目をお忘れですか! これは完全な反逆! 堕天ですぞ!」
「はいこちら、椅子に拘束されてますが、自称、天からの使い、天使様です」
「えー! ただのオッさんにしか見えないよ! それにこいつ、昨日だか一昨日だか社長襲った痴漢じゃんか」
「クーヘン君、全くもってその通りなのだが、それでも異界の言葉を操っていることには違いない。彼には彼なりの言い分、言い訳、そして命乞いがあるのだと思います。ですが何を言ってるかわからない」
「正気に戻って下さいと言っているのです! 今ならまだ引き返せます! どうか清い判断を!」
「ね? ちんぷんかんぷんでしょ?」
「あ! 背中からの出血って翼捥いだからか!」
「ナナ様! こんなこといくら続けても何も変わりませんぞ!」
ガッ!
「……どしたの?」
「いやいやお恥ずかしいところを、やはりここは素直に、アシスタントの助けを借りよう。クーヘン君、彼に食べさせるのを手伝ってくれないかな?」
「いいよー! 口開けさせればいいの?」
「そうそう、開いて、上向に、そのままキープしてて。さてみなさん、このように口を開けさせたら付属品のアルミのロウトを突っ込みまして、喉まで行ったらおしゃべりビーンズを流し込みます」
ざーーーーー。
「うわーフォアグラみたい。これ全部入れるの?」
「全部です。入れたらロウトを引き抜いて完成です」
「さすがです〜ご主人様〜」
「あ! 今のはわかった!」
「でしょ? これがおしゃべりビーンズの力です!」
「ご主人様強すぎです〜」
「だけど声は女なんだね」
「はいこちら、今回はわかりやすくするため、女性の声優奴隷を選びましたが、ご注文の際にはお好きな台詞を、お好きな声優奴隷を選んで、登録することが可能です!」
「じゃあこのオッさんに似合った男性の声も?」
「ご主人様〜頭ナデナデして〜」
「もちろんです! 登録できる台詞は声優奴隷固定で一単語につき豆一粒、先ほどの量で約二百ほどが一気におしゃべり可能! なので逆に台詞を絞れば狙った台詞を確実におしゃべりさせることが可能です! 当然、その場合は他の台詞、言葉は一切口にしなくなります!」
「やった! じゃあ余計な小言も無くなるんだね!」
「ご主人様だーい好き!」
「しかも! このおしゃべりビーンズ、お腹の中に張り付いたお豆が台詞を発しているため、飲み込んだ人間の状況に左右されず、常に台詞を吐き続けます! それこそ喉を裂かれようが、舌を抜かれようが、息を止められようが、本人が何をしようが一切関係ありません!」
「ご主人様ガンバレガンバレ」
「やったー! これで好きな相手と好きなことだけおしゃべりできるよ! やったね!」
「ただ一点、このおしゃべりビーンズ、一粒一粒専属の声優奴隷が丹精込めて手作業で制作してます。のでご注文からお届けまで時間がかかる場合がございます」
「ご主人様いーーーっぱいおしゃべりしようね❤️」
「よしタイミングも完璧。ご注文はお早めにお願いします」
「ご主人様〜奴隷に無理矢理こんなこと言わせてのお人形遊びとか虚しくならない?」
ガッ!
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