ブラッド➕パッチ
「クーヘンだよー」
「クーヘン君、それは後だと言っただろ?」
「あ、異世界ショッピングだよー」
「違う。二つの意味で、あー、異世界テレパシーショッピングのお時間です。ご案内するのはおなじみ、ナナ=ビンテージと?」
「今回の商品はねー」
「クーヘン。あぁもう、始めよう。紹介して」
「商品名言うの社長でしょー?」
「あぁそうだった。そこは覚えてるんだ。じゃあクーヘン君、私がお休みしてた間、私にどこか変化ないかな?」
「髪切った?」
「残念切ってないんだ」
「太った?」
「……確かに体重は増えたけど、体脂肪率下がったからセーフだよ」
「何また妊娠したの?」
「やめたまえやめたまえ。またも何も私は生娘、汚れを知らない乙女なのだよ」
「じゃあ何、めんどい」
「この左手の輝きが目に入らないかい?」
「何それ光って、タトゥー? ふりょーでびゅー?」
「違うんだなぁ。これ、実は私、知恵の女神の血統となりました」
「血統? 血筋? なれるの?」
「なれるのです! このブラッド➕パッチで誰でも簡単お手軽に誰の血統でも取り込めるのです」
「痒いの?」
「ちょっとね。さてこのブラッド➕パッチ、入れ物こそ通常の無痛注射器ですが中身が凄い。チクってするだけで伝説の血統因子を取り込むことができるのです!」
「伝説って?」
「よくぞ聞いてくださいました。今回、わがコーポレーションは頑張りました。古今東西の王家貴族の墓を暴き、有名人から血を盗み、更には企業秘密ルートであの『勇者』『サーヴァント』『D』『戦闘民族』『天空の花嫁』更には『オーガ』に『首に星型の痣のある一族』まで、おおよそメジャーどころは一通り集めさせて頂きました! これらの血統、血筋に注射器一本で加われるのです!」
「それって意味あるの?」
「そう来ると思いましてこちら、ご用意させていただいたのが、かの有名な『天空の剣』になります。ちょっとクーヘン君、装備してみて」
「うーーん、無理」
「でしょ? でも注射でプスリとやれば」
プスリ。
「ささ」
「うーーん。できた」
「はいこの通り。選ばれた血筋限定装備も難なく装備可能、同様にダンジョンや結界、専用パワーアップイベント、さらにさらにいわゆるセカイ系イベントにも乱入できるんです!」
「でも、そんなのって滅多にないよ?」
「確かにレアケースかもしれません。ですがオプションで何者かの遺伝子をお持ち頂ければ、その何者が持つ血統を取り入れることも可能です」
「……それで?」
「つまり赤の他人と注射一本で血筋になれるということ。憧れのあの人と血の繋がった兄弟姉妹となったり、死んだあの人の血縁者として名乗り出て遺産を頂いたり、逆に他人に打って裁判での血痕の証拠の信憑性を貶めたり、使い方はあなた次第です」
「でも大丈夫なのこれ?」
「当然です。わがコーポレーションのきびしぃ検査基準をクリアし、幾万人の人体実験で安全は確認済みです。そもそも人に人の遺伝子を組み込むのですから突然変異など起こるはずがありません!」
「へーーー」
「さぁこの血統第一主義社会を生き残ることも、後付け血統強化の恩恵を埋めることも、見窄らしい自身の血統とオサラバすることも、注文一つ、注文一本で叶うのです! さぁ今すぐご注文を!」
「あ、じんめんそ」
「え?」
「ほら注射跡のとこ、人の顔、初めてみた。痛い? 痒い? 喋れる? 喋れる? おたけさんって言ってみて。ほら、おたーーけさん!」
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