エクスプレイズ・ヨーグルト
「みなさま異世界での生活、如何お過ごしでしょうか? 毎度おなじみとなってまいりました異世界テレパシーショッピング、ナナ=ビンテージです」
「アシスタントのヤスダです」
「さぁ今回は、異世界に行ったのなら一度は手作りしたい一品、なんだと思います?」
「そりゃ持ち論、火薬、ですよね?」
「そうです。知識チートに代表される三大発明、マヨネーズ、リバーシー、そして火薬! 中世ヨーロッパ程度の技術しかない異世界ではこれ一つで世界の覇権がとれます!」
「でもそれだけ作るのも難しいんですよね」
「そうなんです。一般的な手作り火薬となりますと黒色火薬となりますが、材料の木炭、硫黄、そして硝石、ですが木炭以外はみなさま馴染みがないのではないでしょうか?」
「そうですね。硫黄なんて温泉地で匂いを嗅いだぐらいですね」
「そうでしょう。それでも手に入りやすいものなんですが、最後の硝石が問題です。元の地球でも海鳥などの糞の堆積物を見つける以外には、あの、その、アレです」
「……社長、ごにょごにょ言ってたらわかんないですよ」
「……アシスタント君、続き読んで」
「何を社長、だから練習しろってあれほど」
「いいから!」
「はい。えっと、ウンコです。ケツからひねり出した堆積物、それらを寝かせて分解して硝石を採取する。これは手間も時間もかかります」
「そうなんです。しかもそれで終わりではなくて、さらにそれらを調合して、ともなると大変です。そこでこちらの商品をご紹介」
「エクスプレイズ・ヨーグルトです」
「はい、見てください。こちらのヨーグルト、一見しても普通のヨーグにしか見えません。ですが使っているヨーグルト菌が違うんです」
「見た目ではあまりわかりませんが」
「でもそうなんです。こちらには『ドリフターズ菌』という、特許出願中の遺伝子組み換え菌を用いてまして、あの酒蔵の麹菌がアルコールを生み出すように、こちらは火薬を生み出すのです」
「遺伝子組み換え、食べれるんですか?」
「そうおっしゃられると思いまして、実食してみたいと思います。ですが私たちが食べたところでステルスマーケティングになってしまいます。そこで今回は特別ゲストをお呼びしてます。こちら!」
「が…………………あ」
「わぁみなさん、ドワーフですか?」
「そうです。彼らは私たちコーポレーションとの専属契約を断った、いわば敵である彼らが、私たちに都合の良いリアクションをくれるわけがありません。加えて彼らは一週間もの間、塩と水だけしか口にしない偏食家! ともなれば一口も食べないこともおおっと!」
「貪り食ってますね」
「見てくださいこの食べっぷり! まるで三日間何も食べてこなかったみたいな勢いじゃないですか!」
「あぁはい」
「さぁ味を見てもらった後にはいよいよ爆発実験です! そのために用意したのがこちらの……えぇ」
「…………社長、続けて」
「いや、でも」
「台本読んでないんですか?」
「読んだけどさ。本当にやるの? 私ここにいないとダメ?」
「ダメです。爆破後の感想と臭いのレポート、何よりリアクション芸が肝って力説しましたよね?」
「だけどさ、その、出るの、モザイクとか無しで、見るんだよ?」
「当然です。当然放送も無修正で、ちゃんと出てきたのが火に触れてどっっかーーーーんてなるとこまでやります。でないと売れないです」
「そんなの、どこに商機があるんだよぉ」
「主に気合の入った腐女子と、ファッションじゃない野獣です。リサーチ済みです。諦めて下さい」
「いやでも、あ、いやほら、あれあれ」
「そんな手には引っかかりませんよ」
「うぐぅううううがががが」
「ドワーフ乗っかるな。後でちゃんとぶっ殺して……なんで発光してんだ?」
「爆発? こいつ爆発するの?」
「知りませんこっちに来るなドワーフ!」
「やばいよね? やばいでいいんだよね?」
「おいドクター! これどう、あっくそ! お前そっち入れろクッソ!」
「あ、待って! 置いてかないで!」
「がががっがががっががっがががあああああああああ!!!」
ブリュ、ブリ、ブブブブブブブブリュリュリュプップ!
どっっかーーーーん!
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