金属溶解装置

「みなさん異世界生活をいかがお過ごしでしょうか? 異世界テレパシーショッピングのお時間です。ご案内するのは社長の私、ナナ=ビンテージです」


「アシスタントのヤスダです」


「さて今回、ご紹介するのは、長年異世界で問題になってきたアレを、一気に解決できる装置です」


「今回はかなりめちゃくちゃなことができる器械ですね」


「さてヤスダ君、あなたは今、戦場にいるとします」


「いきなりですね」


「さぁそこで、オークの登場です」


「フンガー!」


「ご覧の通りこちらのオーク、安全のため足首はコンクリートで固められてますが、それ以外の全身を鉄の鎧で守っています。さぁどうします?」


「そうですね。物理で殴る、とかですか?」


「ダメですよヤスダ君、そこは鉄の弱点の炎で攻撃するって言わないと、小学生でも知ってる常識ですよ! そんなだからその歳でアシスタントなんですよ」


「あ?」


「さぁこちらに火のついたタイマツと、燃焼剤としてサラダ油をご用意してあります。では早速、こちらをぶっかけてください」


「……これでいいだろ」


「はいそうですね。満遍なく、はい十分です。それでは着火してみましょうぽいっと」


 メラ!


「ぎゃああああああ! 熱い! 熱い! 熱い!」


「さぁどうでしょう。オーク君、カタコト設定を忘れてもがき苦しんでます」


「そりゃ、焼かれてるからな」


「あああああああああああああああああ!!!」


「ですが見てください。鎧は無事、わずかに焦げ目が付いているだけで一向に溶ける兆しもありませんね」


「そりゃ鉄の融点は高いからな。でなきゃフライパンとかどうすんだよ」


「助けて! 助けて! 助けて!」


「実はこれ、異世界特有の現象なんです」


「おい」


「消してくれぇええええ!!!」


「異世界には地球にはない、魔力と呼ばれる力が働いています。これが鉄の分子構造に結びついて熱への耐性を強めてしまうのです」


「またそれっぽい嘘を」


「がああああはあああぁぁぁぁぁ………」


「それを知らずに恥をかいてしまった経験、ございませんか? そうでなくても弱点相性が狂ってしまい、せっかくの華麗な戦略が台無しに、なんてことは避けたいですよね? そこでご紹介するのがこちら! 金属溶解装置です!」


「この流れだと嘘くさくなんだがな」


「ご覧の通り大きさ、重さは私と同じぐらい、家の中にすっぽりと入るぐらいの小ささです。この装置のこちらのメモリを今回は『鉄』に合わせて、次にこちらのメモリを温度に合わせ、最後にスイッチを入れると」


 チントロリン♪


「はいこれで見てください。もうコンガリで動かなくなったオークですが、その覆っていた鉄の鎧が溶解し始めてます」


「これは素直にビックリですね」


「秘密はこの装置から発せられる特殊な電磁波! それがメモリに合わせた金属に共鳴して分子構造に影響し、魔力の影響を打ち消しているのです」


「なんだかわからないけどとにかくすごい」


「この大きさで地球で言えば大陸をすっぽりと覆えるハイパワー、しかも燃料は液状ウランを用いていて三百年は嫌でも止められません」


「流石の核パワーですね」


「さらにとっておき、メモリを合わせれば他の金属も、さらにメモリを合わせて押し込み、記憶させていけば全部の金属の融点を自在に下げることができるのです。ちょっとやってみましょう」


「おい待て社長、そんな台本にないこといきなり試すな」


「まぁまぁ、スイッチオーーン!」


 チントロリン♪


「さぁてどうなるかなぁ」


 …………ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ。


「おや地震ですね」


「……違う。こいつは、地下の金属資源が地熱で溶解し液状化してるんだ。このままだと、急いで装置止めろ!」


「紹介が終わったらね。さてこの金属溶解装置、ちなみに装置自体はプラスチックと石灰石で構成されて金属は一切使用してない、アレルギーのある方でも安心設計です。こちらを百年のレンタルとして、そちらの世界への医療ゴミ産廃権でいかがでしょう」


「貸してる間はゴミ捨て放題、早くまとめろ」


「それではこの金属溶解装置、小学生レベルの常識がないとバレる前に一台、如何でしょうか?」


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