ブサイクホンショウアバキダス=ウイルス
「今日もやってまいりました異世界テレパシーショッピング、ナナ=ビンテージです」
「アシスタントのヤスダです」
「さてみなさんはブサイクが視界に入って困る、と言った経験はございませんか?」
「いやぁしょっちゅうですよ。町なんか歩いたらもう、よくそんな顔で生きていけるなって顔ばかりですから」
「目に毒なブサイク、しかし実際ブサイクは害をなすのです。こちらのパネルをご覧ください。沢山の顔が並んでますが、ヤスダさん、どの顔が味方か、わかりますか?」
「もちろんです。こいつとこいつ、この娘は美人ですが髪の色が緑なのですぐ消えそうで、逆に黒髪のこの娘は、地味な顔つきながら髪にこだわりがあるようなので重要人物じゃないですか?」
「さすがヤスダ君。ご名答です。緑は幼馴染で人気なく、こちらの地味なのはお城のメイドで実はお姫様だったるしてるんです。ではこちらはどうでしょう」
「見るからに凶悪ですね。こいつなんか殺されるために産まれてきたって顔です。こいつも、悪人そうですが、最後仲間になって許される顔ですね」
「またまたご名答です。こちらは最低でも十人は殺している殺人鬼を集めたものなのですが、彼だけが過去に悲しいエピソードがあったため、一国の長を殺しておきながら、今ではその国の英雄として、要所について石像まで作られてるのです」
「おぉどうりで、顔つきながらが他と違うと思いました」
「そうなんです。人の良し悪し、善悪、優秀かどうかは顔を見ればわかるんです。これは有名企業でも取り入れられている判別方法で、見た目だけでその人の価値の九割はわかるのです!」
「確かに、こうして論理的に説明されると納得ですね」
「ですが、悲しいことに、異世界の原住民たちは己の直感と鏡に映った顔からこのことを認めたがらない。そのことで損しているにもかかわらずに、です」
「確かに、自分も銀髪ロリ犬耳美少女奴隷を売りに行った時に、せっかく我慢して処女で下ろしたのに、獣人は不吉だからとか言われて買い叩かれた経験がりますよ。思えば買った方はブサイクでした」
「そこでみなさん、今回ご紹介する商品はこちら、ブサイクホンショウアバキダス=ウイルスになります」
「ウイルス、生物兵器ですか?」
「そうなんです。こちらのウイルス、ご覧の通りスプレー缶に入ったエアロゾル式なのですが、顔に一吹き、シュッとやりますと鼻の粘膜に付着、増殖します。ですが、いわゆる美形と呼ばれる整った顔つきですと鼻が通ってますのでたまらず流れ落ちてしまうのです」
「つまり、免疫ではなく顔の形で感染するかが変わると言うことですか?」
「その通りです。実演してみましょう。こちらへどうぞ」
「放せ! 放せ!」
「おねーちゃーん!」
「これはこれは、可愛らしい双子さんで」
「はいこちら、ご用意したのが美形で、そっくりな一卵性双生児です。つまり遺伝子的には同じですね。ではヤスダ君、片方をブサイクにしてください」
「いいんですか?」
「勿論です。思いっきりやってください」
「それでは遠慮なく」
「妹に手を出すんやない! やるならウチを殴ったらえぇ」
「それでは遠慮なく」
ボス! ボス! ボス!
「おねーちゃーん!」
「だ、大丈夫、うちは、平気や」
「さぁこれで、姉の方は顔パンパンのブサイクになりました。ですがこのままですとダメージが、ではないかと言われてしまうのでヤスダ君、顔以外を」
「喜んで」
ボス! ボス! ボス!
「やめ、やめぇや」
「おね、げぼ、おねちゃん」
「はいこんなところで、いってみましょう」
プシュ。
「……ぁ、あ、あ、あああああああアアアアアアアアアアアア!!!」
メキメキメキメキメキメキ!
「どうですか! 鼻で増えたウイルスは脳を改造し本能を解放させ、ついでに全身をメッサマッソーにしてくれます」
「まさに化けの皮が剥がれたわけですね」
「そして今、となりにいる妹へ、ブサイクが持つ劣等感が爆発して……あれ?」
「……ウチ、妹、守る」
「おねぇちゃん」
「…………はいストップ。ドクター! 大丈夫って言ってたじゃないか」
ビ!
「確かに、この商品のウリは感染経路だ。ブサイク殲滅ではないし、兵器でもない」
「おい、こいつらどうすんだ?」
「あぁ、ヤスダ君、いつも通り片付けておいて」
「はいはいったく、やりないしかよ」
ブィイイイイイイイイイン!
「ぎゃあああああああああああ!!!」
「おねええええちゃああああああああん!」
「この商品の購買層はブサイクかどうか自信がない奴ら、だ。だから感染力は、ブサイクであっても、チートで対抗できるギリギリにしてある。そこまでは完璧だ」
ビ!
「違う! 顧客は醜い相手は心も醜くないと気が済まないんだ。そうすれば見た目だけで簡単に敵味方、善悪の識別ができるし、灰色みたいな悩むことを嫌う。だから感染後の症状は思いっきり頭にくるのが良いんだ」
ビ!
「そうそう、次はそれで本番と行こう」
「いや社長、これ生放送ですぜ」
「いや、え? 生って、これ流してるのかい?」
「そっちの方がドラマ感があるって、社長が」
「あ。あーーー…………はい! いかかでしょうこちらのチェーンソー、切れ味抜群で、ちょっと貸して」
「はい」
「見てください。女の細腕でも軽々動かせて、しかも魔力動力のアーティファクトなので充電いらずで半永久的に使えます。それでこの切れ味!」
「ぎゃあああああああおねええちゃあああああん!!!」
「鎖骨から肋、背骨、ずずいっといって骨盤まで、バッサリいけて手応え軽く、
刃こぼれなし。しかもサッと水をかけるだけでこの通りピッカピカ!」
「えっと、わぁ、お手入れいらずですね」
「こちらのチェーンソー、ミスリルコーティングで三年保証のものを、今だけ! 一本買えばもう一本付いてくる!」
「やった両手持ちで無双し放題ですね!」
「こちら、人体も姉妹の絆も神も話の流れもぶった斬れる万能ミスリルアーティファクトチェーンソー、なくなり次第終了です!」
「わぁいい感じの誤魔化せ、口止め料込みの二本セット、これは買いですね」
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