第2話 始まり①

「ガルドおじさん、もう少し手を抜いてよ」


この自分より背丈の大きい剣を平気な顔で振り回すのはガルド・リーゼルト。父親とは古くからの知り合いらしい。


「はっはっは、手を抜いたら練習にならんだろ。にしてもルシ坊、仕方ないとは言え左の死角を意識しすぎて対応が遅れているな」


俺は生まれた時から左目が見えていない。不思議な事に、医者に見せても何故見えていないのかわからないとか。


「今日こそあててやる!」


体を起こしガルドおじさんに向かって走り出す。


「よし来い!」


その日は日が暮れるまで剣術の練習を続けた。にしても、おじさんは一体なにをしてる人なんだろう。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「ただいまー」


家に帰るともうじきご飯ができるのだろうか、家中にいい匂いが漂っている。


「あら、お帰りルシフ…ってまたそんな泥だらけになって。またガルドおじさんと特訓してたの?」


「うん、結局一回も当てられなかったけど。それより父さんは?」


この見るからにおっとりしてそうなのは俺の母さんでエリザ・カーライル。昔は凄腕の魔術師だったらしい。因みにガルドおじさんと母さんは幼馴染らしい。


「そろそろ帰ってくるんじゃないかし…」


ガチャン


「ただいまー、エリザと息子よ!」


すると、帰ってくるなり俺の頭に手をおき雑に撫で始め母さんとはキスをする。見慣れた光景だけど俺はもう15歳だ。そろそろやめてほしい。この鬱陶しいのはラディス・カーライル、俺の父さんだ。


「ってルシフ、またガルドと遊んでたのか、ばっちーな」


ばっちーと言いつつも父さんの手は俺の頭を撫で続けていた。鬱陶しくはあったが、父さんな撫でられるのは嬉しくもあった。


「遊びじゃないよ、剣術の稽古をしてもらってたんだ」


「ほう、その様子じゃ今回も一太刀も当てられなかったか」


ボロボロの姿を見てそう思ったのだろう。その通りなのだが。


「まぁ、ガルドに勝ったらそれこそ国が騒いじまうがな」


「国が騒ぐ?」


一体どういう意味だろうか。そういえばガルドおじさんって普段なにしているんだろう。


「あー、そういや、ルシフには言ってなかったか。ガルドは元帝国騎士の団長だったんだよ。今は引退して帝国兵の教育係をしているみたいだかな」


「えっ!?、ガルドおじさんって騎士団長だったの?」


言われてみればがたいといい剣さばきといい、そこらの兵士とは違うと思っていたがそういうことだったのか。


「そういえば父さんって…」


「ラディ、ルシフそろそろご飯できるから準備してちょうだい。ルシフは先にシャワー浴びてね」


「「はーい」」


まぁ、後で聞けばいっか。それにしても父さん、いい歳してその返事はないだろう。






























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楔と綻 更科悠紀 @yuu0526

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