楔と綻

更科悠紀

第1話 プロローグ

「...どうして」


そこには、腕は切り落とされ、片目は潰れ、身体中傷だらけの少年が倒れていた。

少年に切っ先を向ける騎士は酷く冷徹な眼をしていた。


「どうして...か、理由は簡単だ」


騎士は少年にひとこと、


「お前が...バケモノだからだ」


そういうと騎士は少年の心臓を刺した。



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「......っ!」


目を開けるとそこには先程と変わらない景色が見えていた。


(...やっぱり俺はバケモノなのか)


かろうじて意識は残っていた。と言っても少年の身体は再生していない。


(やっぱり死ぬのかな、俺)


俺には夢があった。ヒーローや勇者になりたかった訳でもないし、地位や名誉が欲しい訳でもない。俺は普通を望んでいた。普通に暮らし、死んでゆく、そんな普通の人生を。


『生きたいのか?』


突如誰かの声が聴こえてくる。男の声のようにも女の声のようにも聴こえるその声は、まるで脳内に直接話しかけているような感覚だ。


「...お前は...なんだ?」


直感ではあるがそれはこの世のものではないと感じた。


『私か?そうだな...まぁ神のようなものだ』


神か。


ー神ー 神とは魔界、天界そして人間界を創ったといわれている。だがそれは書物の中な話であり実際にいるかどうかもわからない架空の存在でもある。


『もう一度問おう。お前はまだ生きたいと思っているか?』


何故このような質問をするのか分からない。幻聴の可能性だってある。無視したって構わないだろう。...しかしそれとは裏腹に1つの言葉がよぎる。


「...生き...たい」


既に少年は限界に達していた。耳が遠くなり、身体中はピクリとも動かない。最後にこんな話をして終わるのだろうか。


『...ほう、あれだけ悲惨な目に遭いながら生きたいか。家族、友人を理不尽に殺されてもなお、生きたいと』


では最後に1つ、と神は


『お前はどう思う?この世界を。憎んでいるか?壊したいか?お前の大切なものを奪ったこの世界を』


そんなもの決まっている。憎んでるし、壊したい。でもそれ以上に...


「悲しかったよ...俺はただ普通に...生き...たかった」


そう言った直後、少年は動かなくなった。


『...そろそろ時間か』


突如少年の真上から二本の刀が現れ、心臓に突き刺さる。


『少年...いや、魔王・ルシフェル、私に見せなさい。お前が創る人生ものがたりを』






















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