実は、本当の最初はファンタジーでした
私は「ファンタジーの方がいい」という担当氏の助言に、心底衝撃を受けました。
白状しますと実は企画書を書く前段階では、この作品はまごうことなきファンタジーでした。
脳内概要は以下の通り。
巨大なモンスターに怯える人間は非常に原始的な暮らしを送っていた。彼らの村が祭り上げる巨大な骸骨の神様だった。
村がピンチの状況で、主人公は巨大な骸骨の心臓となって戦う。そして巨大な骸骨は人間の姿になると、銀髪のイケメンになる。
FGOを知っている人に分かりやすく言うと、巨大な山の翁がマーリンになるような感じです(笑)
大学時代に民俗学の講義を好きで受けていたり、親戚でその類の学者もいたので多少の知識はありました。
さながら『∀ガンダム』のようなノリで、テクノロジーとは無縁の社会で巨大な骸骨のヒーローが戦うという設定は面白いと感じました。
だから、きっと書けなくはない。
しかし、まったくのゼロベースからファンタジーを立ち上げたことのなかった私はそのままでは気が進まず、現代劇のロボット物風に仕立てあげたものを企画書にしました。
そして打ち合わせの席で、担当氏に見抜かれた次第です。
改めて巨大モンスターの存在するファンタジーにするにあたり、どのような状況設定になるのか?
以下、フラッシュアイデア的な会話の再現。
たとえば『進撃の巨人』のように巨大な壁で囲まれた都市になるのか?
人々はどうやって安全を確保するのか?
そもそも巨大でなくても、現実的に小型のモンスターと戦えるか?
生きたライオンが目の前に現れたら、絶対逃げ出す。無理戦えない。戦いたくない。
JRPGみたいに魔法があっても無理。つーか詠唱中に殺されない?
とりあえず逃げ出すよね。
でも逃げ出す場所ってどこ?
最初から町なんてない。そうすると荒野に最初からある場所に逃げこむよね。
山? 岩場? 丘? 渓谷?
説得力が弱い。
巨大化したモンスターでも登れない高い場所。
約三十分の会話の末、辿り着いたのが円柱の設定でした。
荒野のど真ん中に立つ白い円柱。
垂直の断崖絶壁。
青空、荒野、円柱。ヴィジュアルとしても絵が浮かびやすい。
円柱という強いアイデアが最初に決まったことで、物語の世界観も一気に広がりました。
アーサー・C・ドイルの『失われた世界』で、ギアナ高地をモデルとした場所で太古の恐竜が生き残っていたように、本作は人間が生き残った世界となりました。
脳内で世界観が発展していく快楽は、創作の醍醐味です。
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『スカルアトラス 楽園を継ぐ者〈2〉』2019年8月10日、電撃文庫より発売。
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