企画編

最初は現代劇のロボット物の企画だった

編集部に出した企画書では、現代劇で限りなくロボット物に近いものでした。


概要は以下の通り。

舞台は洋上に浮かぶ熱帯気候の離島。

恐竜が生きていた時代の地層から巨大な骸骨の化石が発掘される。それがロボットの材料として利用される異なる現代。

主人公は化石好きの少年。

メインヒロインは化石少女。

幼馴染の女の子、実家は骸骨の化石を祀る宗教の教祖。

主人公の祖父が責任者を務める採掘場で働く、ダサいお姉さん。実は某国のエージェントとして物語の後半でセクシーに活躍。エヴァのミサトさんみたいな感じ。

島を舞台に繰り広げられる、主人公チームと宗教団体(別のスカルアトラスを保有)、他国の軍事組織(ゴーレムを運用)がメインヒロインを奪い合うような物語でした。

主人公は貴重な存在として守りたい。

宗教団体は生きた化石という信仰対象を崇拝したい。

軍事組織は、最強の戦力として捕獲したい。

三つ巴の追っかけっこの末、もう一体のスカルアトラスが目覚めて戦う。


前作『わたしの魔術コンサルタント』が比較的寒い時期の話だったので、新作は暑い方がいいと最初から決めていました。

またロボット物と夏は良く似合う。『エヴァンゲリオン』『ゼーガペイン』『ラーゼフォン』など名作は夏が多いです。


ヒロイン=戦う力(ヒーロー)というオタク的には一口で二度おいしいという設定に、ロボット物の王道である父親的存在から力を受け継ぐ展開。

神秘的なメインヒロイン、日常を象徴しながら闇を抱える幼馴染ヒロイン、ズボラだけどいざとなったら頼りになる年上のお姉さんという三ヒロインの配置。

基本の配置は似たものがありますが、やはり別物の印象があります。


最大の違いは他のモンスターが登場せず、人間同士の争いだということです。


振り返ると見所は多かったが、全体としてやや散漫な印象もあったのが否めません。

ロボット物の皮を被りながら、ウルトラマンのような巨大ヒーロー物というトリッキーな設定に対して他のドラマが多すぎました。


たとえば幼馴染にはニートの兄貴がいました。

これがFateの間桐慎二のような絵に描いた鬱屈したインテリでして(笑)さながら慎二が間桐臓硯を殺して宗教団体を乗っ取る最中から桜を救い出すような展開も途中にあり、どう考えても一冊では収まりません。

ダサいお姉さんが某国のセクシースパイという設定にも色々裏があります。

三ヒロイン分のルートを一冊で纏めるなんて無茶な話です。


そんなこんなで編集部で企画書を元に打ち合わせしていた際、担当氏の一言により作品は一変します。

「──これ、ファンタジーの方がいいですね」


〈宣伝〉

『スカルアトラス 楽園を継ぐ者〈2〉』2019年8月10日、電撃文庫より発売。

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