第3話  おじさん

 目の前にスーツ姿の男性が現れた。

「あのー。愛羅ちゃんかな?」

「あ、はい、そうです。」

こういうにが初めてだからか、自然と表情が固くなる。40代前半ぐらいだろうか。身なりはきちんと清潔にしていて、着ているワイシャツにはアイロンの跡がついている。割と厚めのフチなし眼鏡をかけていて、少し知的に見えた。外見では、こんなことの手を出すような人間には見えなかった。

「じゃあ、行こうか。」

私は言葉を発さず、首を縦に振って、おじさんの後を追った。

 

 ホテルの部屋に着く。暗いので電気をつけようとすると、おじさんは私の手を遮って、耳元で「つけなくていいんだよ。」とささやき、ベッドの右側にある暖色の電球を1つだけつけた。

「おじさん、慣れてますね。」

と言うと、おじさんは苦笑して「そうかな?」とだけ返した。話題を変えたいのか

「喉乾いたでしょ?」と言って、グラスに水を注いで、ベッドに座ってボケっとしている私のもとに持ってきてくれた。礼を告げて、冷えた水を飲んでいると、背後からおじさんが手をまわしてきた、それに応えるように、私は手を伸ばして、グラスを近くのテーブルに置いて両手をあけると、おじさんは片手でメガネを外して、同じくテーブルに置いた。

「初めて?」

「はい。すみません。」

「ううん。大丈夫だよ。」

おじさんの手が制服のブラウスのボタンを1つ1つ外していく。ブラウスがはだけると、おじさんはブラホックを片手で外した。首から肩を介して指先へとなぞるおじさんの大きい手が途中でとまった。

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