ツイエタノゾミニオイスガリ(3)


               ※


 自分がイクサとして現世に黄泉返ってから数日が過ぎていた。


 今宵は五日目……否、六日目だったか? 正直、曖昧だ。

 当面の目的は、現世と冥府が通じてしまった原因の探索……とはいえ、具体的な方策や手掛かりがあるわけでなし、黒羽根の痕跡を探してさまようだけのこと。

 日中は荒れ果てた街並みを見聞し、見知らぬ文明の痕跡に感歎し、ナナオのために酒を調達しながら、廃墟の街並みを旅して行く。

 ある意味、自由気ままな放浪道中と言われても否定はできない。


 やがて日が暮れれば、わき上がる屍鬼を相手に二刀流の研鑽。


 生命なき動く死体とはいえ、こちらを引き裂かんと襲い来る者を相手に、現に刃を撃ち込み挑む行為は、尋常の稽古とは一線を画すもの。

 より実戦的な修練。

 だが、それによって二刀流が磨き上げられたのかといえば、苦しいところだった。現状は、己の未熟を重ねて思い知っているに過ぎない。


 そして夜明けとともに訪れる、しばしの安息。

 駆られるままに剣を考察し、思うままに剣を振るう日々。そこには昼夜の別ぐらいしか時の流れを意識する意味がない。

 記憶をなくした我が身では推測しかできないが、それは生前よりも剣士として望ましい日々であるのかもしれなかった。


 惜しむらくは、剣客として競い合う敵手に出会えぬこと。

 初日以降、新たなイクサに遭遇していない。

 影姫に連れられた〝ヨモツイクサ〟はもちろん、単独でさまよう〝はぐれイクサ〟にも出会えていない。


 本来、影姫が黄泉返らせることによって現世に立つことができるはずのイクサ。

 しかし、この荒廃した現世には少なくない数の〝はぐれイクサ〟がさまよっている。影姫たちが黄泉返らせた憶えのないイクサが、影姫を伴うことなくさまよっているのだ。


 冥府と現世が繋がったがための現象なのか?

 それとも、イクサがさまよい出たために冥府と現世が繋がったのか?


 いずれにせよ屍鬼と〝はぐれ〟たちの存在が、現状の荒廃に関与しているのは間違いなきこと。当然だ。屍鬼は本能のままに暴れ回り、イクサは意思をもって戦いを望む。

 だからこそ冥府の番人たる影姫にとって、屍鬼と〝はぐれ〟を狩り尽くすことは、世界の異変を探ることに並んで重要な役目だという。

 しかし、出会うのは屍鬼の群ればかり。

 それは、事の手掛かりも見つからず、進展がないということだが……。

 正直、それに関しては別段、切迫した何かがあるわけでもない。

 もっと言えば、自分自身、あまり積極的に調査しようともしていない。


 自分の望みは因果を断つこと……すなわち、二刀流の追求なのだから。


 ただ、あの弓使いと矮躯の影姫……サダメとスズメにもあれ以降会えていないのは、少々気に掛かっていた。


 初見の夜、アーケードにて何らかの戦闘を行っていたであろうサダメたち。轟音と不穏な気配に駆けつけた時には、すでに誰もいない状態であった。響いていた戦闘音と現場の在り様からして、相当に派手な立ち回りを演じていたようだが────。


「心配せんでも良かよ。サダ君は強いし、スズちゃんはもっと強いし。それになあ、もしあそこで影姫やイクサがやられとったら、さすがにウチが感じ取れとるもの」


 月明かりの下、優雅に杯を傾けながらナナオが笑う。


 スズメが強いといっても、影姫は現世では力を自由には振るえぬのではなかったのか?


「世界は〝コトワリ〟に縛られとる。影姫には、影姫を縛る〝コトワリ〟があるんよ。現世では、それがちかっと厳しくなると。スズちゃんは〝葛籠つづらを選ばせる〟こと、それだけが。ウチの場合は……」


 ぴょこりと、ナナオの腰で蒼銀の毛並みが揺れた。

 長く揺れる猫の尻尾が二本。化け猫は尾が二叉に別れるというが……。

 ぴょこぴょこと揺れる尻尾が見る間に増えていく。三、四……計七本の蒼尻尾。


「七……それがウチの繋いだ因果の数。じゃからね、うちは七回だけ〝コトワリ〟を無視して良かちの。もう二回破っとるし、残りは五回になっとるけどね」


 誇らしげに……と、言うには少々陰りのある微笑だった。

 あまり追求するべきではない事柄かもしれぬ。

 だが〝ゆるされている〟という表現は気になった。いったい、誰に赦されているのか?


「……〝あるいは神であるかも知れない何か〟……そういうのがおるんよ。うったち影姫が冥府の番人なら、そいつらは〝コトワリ〟の番人ってとこやね。森羅万象の全ては〝コトワリ〟に縛られ、それを破れば世界に仇為す獣とみなされる。悪しき獣は、世界を喰らう罪悪を犯さぬよう、輪廻から外され地獄に堕ちる」


 語るナナオの声音は淡々と訥々とつとつと。

 普段は陽気な彼女が、時折見せる憂いと陰り。それが素であるのか演技であるのか、無骨な自分には判じ切れないでいる。


 それにしても、先ほどからナナオの言動は、まるでこちらの心を読んでいるかのようだ。


「お兄さんは考えとることが顔に出すぎると。猫は人の顔色をうかがうんが上手だもの、気をつけんといかんよ」


 そんなに表情に出ているのか?

 自分ではむしろ無愛想のつもりだったが……まあ、いずれにせよだ。


「別に、読まれて困ることは考えていない」

「ふふぅ♪ 何言うとるん? 武芸者が相手に考え読まれたらダメダメですニャ」


 なるほど、道理だ。

 現に黄泉返った初戦にて、自分は攻め手を読まれて敗北している。引き締めるべきだ。


 意を固めつつ、左右に構えた双剣を振り放つ。


 月に照らされた廃墟を背景に、周囲から襲い来る屍鬼の群れ。

 眼前に迫る屍鬼の腕を小刀で斬り落とし、ガラ空きになった胸元を大刀で貫いて心の臓を破壊する。返す刃で横の屍鬼を撫で斬り、小刀を突き立てる。


 切り崩すための斬撃は素早く、刃が深く斬り込み過ぎて肉に挟み取られぬよう慎重に。その上で、急所に叩き込むトドメは重く鋭く、確実に叩き込む。


 崩しの太刀筋からトドメへの連撃。

 流れる剣閃に、群がる屍鬼の群れは次々と蒼く燃え尽きて逝く。


 基本的に緩慢な挙動の屍鬼たちだが、いざ至近にて襲い来る瞬間にその速度を跳ね上げるものが多い。中にはひときわ鈍重な代わりに異様な怪力を振るうものや、遠間からも俊足で襲いくる獣型にも遭遇した。

 今回遭遇した屍鬼は七体。

 いずれも通常個体……号と呼ばれるものたち。号と呼ばれる怪力型や、号と呼ばれる獣型は見当たらない。


 自分が五体目をほふったところで、背後からナナオの不思議そうな声が流れる。


「……ウチには、立派な二刀流に見ゆるけど……」


 世辞や嫌味であるわけもない。

 そもそも、現に問題なく敵を屠る姿だけを見れば、そう誤解するのも仕方ない。


 遠間からこちらに迫る残りの二体。

 其奴そやつらを睨みながら、自分は左の小刀を鞘に収めた。

 大刀を両手で握り直し、正眼に構える。

 前方から折り重なるようにつかみ掛かってくる屍鬼ども。

 差し伸ばされた一体目の右腕を、刃ですくうように巻き上げて斬り飛ばした。

 腕を飛ばされた衝撃に仰け反り、斜めに反転して体勢を崩した屍鬼。

 その背面に、返した斬撃を叩き込む。胴体ごと心臓を両断されて蒼い鬼火が舞い上がる中、もう一体が至近に迫る。

 斬りつけるには近すぎる間合い。

 なれば喰らいついてくる顎先に柄尻を突き上げて押し退け、その反動に任せて身をひるがえし、一回転からの薙ぎ払い斬りを振り放つ。

 迎え撃とうとした屍鬼の腕を諸共に、大刀の刃は横一文字に走り抜けて蒼い火炎を噴き上げた。


 二刀流において────。

 基本の型は、多くが二段構えの太刀筋となる。

 一で崩し、二で仕留める。

 一で受け流し、二で返す。

 一見して理に適った剣の術理だが、それは一刀においても当然に行使できる術理。

 むしろ斬撃力に勝る一刀ならば、今して見せたように崩しの初太刀を振り抜いて、トドメに繋げることもできる。すなわち、二手が一手に縮まるのだから、どちらが優位かは歴然だ。


 ならば二刀の神髄は、文字通りに刃がふた振りあることか?


 確かに、二刀ならば崩しと殺撃の二手を同時に放ち得る。左右の敵を同時に相手取ることもできる。が、それは前提として相手の力量が自分よりも劣る場合に限る。


 二刀でそれをなすには尋常ではない筋力が必要だからだ。

 無論、それに加えて二刀を精妙に操り得る技量と反応もだ。

 

 実質、二刀で二方を相手取るのは、いずれも片手であしらえる相手である時にのみ可能なこと。


 否、それ以前にだ。

 左右からの攻撃に全く同時に応じなければならないなど、その状況に陥っていること自体が愚鈍だろう。

 一刀であれ二刀であれ、左右から迫られたなら、まず一方に対して踏み込み捌いてから、改めてもう一方を迎え撃つのが定石にして上策である。


 だいたい、二刀なら二方に対応できるから何なのだ。その理屈ならば、三方以上から来られれば、二刀でも駄目ではないか。


 手数の多さと宣ったところで、片手持ちでは同格の両手持ちの剣速と太刀筋には及べない。片手持ちでも両手持ちに劣らぬ剣速と太刀筋が、最低でも倍以上の力と速度が振るえなければ、二刀流の意味はない。


 だが、片手での振りを鍛えるほどに、必然、両手での振りも強くなる。振るう者が同じならば、片手で振るよりも、両手で振る方が速く、精妙になっていく。


 何よりも問題なのは……。

 ということ、その根本こそが困難極まる行為なのだ。

 左右の手に筆を持って、同時にそれぞれ別の文章を書こうと試してみればわかる。決められた文章を記すことすら困難、まして文を創作しながらとなれば不可能の域。


 人の頭がふたつにならない以上、ひとつの思考をふたつに割るしかないが、割ろうと思って割れるものでもない。

 ゆえに、二刀流は型に嵌まった太刀筋……すなわち出来合いの文章を記すのが限界で、型から外れた臨機応変を強いられた途端に、多くは致命的なスキを生む。

 

 左右の腕が別の生き物のように動かせれば、どんなに良いか……!


 斯様にも、あらゆる事柄が二刀流を非現実と断じている。 

 現に自分も、二刀を構えるよりも一刀を振るう時の方が歴然と強い。

 その上であえて二刀を構えるのは、詰まるところ、ただのこだわりにしかなっていない。二刀強いのではなく、二刀強いという外連けれんの輩。武芸者ならぬ曲芸者に成り下がっている。


 だから────。


 そういうことではないのだ。二点同時だとか、手数による波状攻撃とか、そういうことではないはずなのだ。


 二刀流。左右の手にひと振りずつ刀を握る剣流。


 流技である以上、学び継承できるものでなければならない。

 一代限りの力自慢や両利きの異才が、たまたま体現しただけの外連技などではない。

 そのような嘲笑や蔑視など認めない。

 二刀流は、必ずや────。


「本当に、実現できると思うとるの?」


 吐息混じりのナナオの声。

 自分の焦燥に割り込んできたそれは嘲りでも蔑みでもない。まるで憤る相手をなだめるような、優しげなものだったから……。


 ……自分は、熱くなりかけた思考を静めてうなずいた。


「実現はしている。だからこそ、我が剣は天下無双なのだ……」


 記憶はない。

 過去は知らない。

 それでも、魂の根底に刻まれたその感覚だけは忘れていない。

 双手に掲げた二刀にて、天へと届いたあの瞬間を、あの輝かしき瞬間を……自分は、確かに憶えている!


 なのに、なぜそれを体現することが叶わない!?


「んー……ゥニャ♪」


 わざとらしい掛け声とともに背後から抱きついてきたナナオ。

 甘ったるい匂いと、柔らかな女体のぬくもりを存分に押しつけながら、じゃれつく猫そのままに喉を鳴らす。


「お兄さん、怖い顔になっとーよ……。いくら無念やからって、因果を追うのに怨念まみれで走るんは苦しいのさんのよ。それを見とる方も……ねえ?」


 戯けた声音。しかし、紡がれた言葉はズキリと胸に疼いた。

 肉体の痛覚をなくした今も、心の痛みは変わらぬか……喜ばしくもあるが、情けなくもあるな。


「あんねー、お兄さん。昔の偉い武士さんが言うとったよ? 〝武士道は死ぬ事と見つけたり〟……けど、それは死を恐れるないう意味でも、死を覚悟しろいう意味でもない。常に死を受け入れ、死んだつもりで新たに臨む……死んだつもりで頑張って……それが武士道やって。お兄さんも武士なら、怨念や無念より、信念ば通しい。その方が格好良かよ」


 自分の頬をぐりぐりと指先で弄ってくるナナオ。

 武士に対して無礼千万もはなはだしいが、怒る気にはなれなかった。むしろ、ささくれ立っていた気分が和らぐ感じに、自分は微笑を返す。


「ふふ、笑うてくれた♪ やっぱり男も女も笑顔なのが一番良かね」


 応じたナナオの笑みは掛け値なしに嬉しげなもの。

 相変わらずフワフワとつかみ所がない女性だが、そういう所も確かに猫らしいか。


〝武士道と云ふは死ぬ事と見つけたり〟


 どこの武士が遺した言葉かは知らないが、それが古い書物の内容だという知識が脳裏にわき上がる。


「……〝葉隠はがくれ〟か……」

「ん? 知っとると? なら、お兄さん結構近代の武士さんなのかもしれんね」

「……いや、知らない。知らないが、時折、知らぬはずの知識がわき上がるのだ。思い出すのとは違う。ビルだのアスファルトだの、明らかに現代の知識が多いからな。おそらくはこの肉体の記憶だと思うのだが……」


「…………ふーん」


 奇妙に間の空いたナナオの反応。


「それはたぶん、お兄さんだけに起きとることよ。だって、本来イクサの肉体はそのイクサ当人のもの。影姫の力で鬼火を素体に練り上げた新しい身体に、イクサの御霊を宿らせっと。別に現世で死体を調達して乗り移ってるんと違うとよ」

「何? それは……」

「知らんのは無理ないけど。……そう、お兄さんは現世の誰かを依代よりしろにして受肉したんやね…………あの子も、ずいぶんエグイことしよる」


 痛ましさと苦々しさが半々といった様子のナナオ。

 自分は己の胸元に視線を落とす。

 破れたシャツから覗く因果の銘。

 その〝天〟の文字の下でねじれ引き攣れた傷痕。

 戦いで負った傷は、腕を斬り落とされたものも含めて綺麗に癒着し塞がり消えている。なのに、この胸の傷だけが消えないのはなぜかと思っていたが……。


 あの時、自分はここに刀を突き立てられることで因果の銘を刻まれ、イクサとして黄泉返った。それがゆえなのか……?


「あの黒羽根の影姫は、なぜそんなことをしたのだろう」


「さあ、そげんことした影姫は今までおらんかったから……というか、そげな風にイクサを黄泉返らせられるんが初耳。けど、そう……そげん強引な黄泉返りやったから、お兄さんの記憶は飛んだごたあるね」


 ナナオはそう独りごちるように頷いた。。

 その様子はどこか心ここに在らずというか、思案げにうつむいている。


「ナナオ殿?」

「……ん……どげんしよう……けど……うん、そう……やね。お兄さんは、ウチの味方や言うとったもんね」

「…………正直〝何があっても〟とは、まだ断言できぬがな」

「ふふ、良かよ。むしろ、ここでそげんこと言う男の方が信用ならんわ。そんなんウチを誑かそう思とるか、色香に惑っとる阿呆かの二択やもん。ただねえ、お兄さんはウチの味方……なら、ウチは誰の味方をしようかなあ……て、少しちかっと悩んどると……」


 誰の味方。

 それはスズメと黒羽根の二択か? あるいはそれ以外の何かか?

 少なくとも、これまでのナナオの主張は〝我関せず〟であったはず。

 ならば、今まで考えるまでもなかったことに、考える余地ができたということなのだろうか?


「うん♪ 決めた」


 ナナオは元気良く顔を上げる。


「ウチは、お兄さんに嫌われない方に味方する♪」


 朗らかに宣言して、ギュッと抱きつく腕に力を込めてくる。

 自分に嫌われない方とは、また曖昧な選択だ。というより、実質選択していないのと同義だ。


「それは成り行き任せとはどう違うのだ?」

「何ね? ぜんぜん違うとよ。お兄さんの敵が、ウチの敵ってこと。例えそれがウチの味方だとしても……お兄さんの敵なら、ウチの敵♪」


 明るく楽しげに言い切る。

 そんなのは誑かそうとする輩か、色香に惑ったウツケなのではなかったのか? 自分に色香があるとは思えぬし、ならば……。


「……自分を、誑かそうとしておられるのか?」

「ふふぅ♪ どげんやろ、お兄さん優しいから……本気か芝居か、ウチにもわからんごたなってきたんよ……ねえ、どげんするぅ?」


 双眸と声音を色っぽく細めて、ナナオが撓垂れてくる。

 蠱惑的に身をよじるのにつれて流れる蒼白い乱れ髪、それを指先で梳きつつ、自分はことさら盛大に溜め息を吐き出す。


「酔っ払いには冷水でも飲ませて介抱しよう」

「ニャハハハハ♪ やだよぅお兄さん♪ ウチはぜんぜん酔うとらんですニャア♪」


 ニャアニャアとまとわりつきながら管を巻き、今にも倒れ込みそうになる彼女を抱き留め支えながら……。


 ……さて、気まぐれで移り気な猫殿の心境は窺い知れぬが、その変化の要因は、やはり、自分の境遇なのだろう。


 黒羽根の影姫により、現世の人間をにえとして黄泉返ったイクサ。


 ナナオにとって、それが何を意味しているのはわからない。訊ねれば、案外あっさりと教えてくれるかもしれないがな。


「ゥニャア……そげんでも〝死んだ気になって〟って言うて、お兄さんイクサやからもう死んどるとよね。武士道意味ないくさい!」


 自分の腕の中、愉快そうに笑うナナオ。

 それが芝居であれ素であれ、自分にとって微笑ましく好ましいことは事実である。


 ならば、今はそれで良い。


 事の要であるならば、いずれイヤでも向き合うことになるだろう。わからぬことを、わからぬままに講じても惑うだけだ。


 正直、惑うのは剣の道だけで手一杯である。


 自分は意識して深い吐息をこぼしつつ、抜き身のままだった大刀を鞘に収めた。


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