第19話母子の気持ちと個性的な父親 ①

 今月もまた【何でも屋】の日がやってきた。

すっかり朝の定番になったパン屋さんで、朝ごはんを購入した3人。今日はお結びにした。


 お店に着くと早速、香がお茶の準備をする。

「お結びだしお茶が良いわよね。緑茶入れるわね。」

「ありがとうございます。ここのお結び、少し小さめで食べやすそうですね。」

「うん、このサイズなら2種類食べられる。私、塩昆布とかつお節にしたんだ。」

「私は、梅干しにしました。ここのお結び梅干しの種を取ってあるやつなんですよ。食べやすくて嬉しいですよね。最後の種を出すの家なら良いんだけれど外だと少しやりにくいっていうか、なんていうか。」

「ああ、私も気になっちゃう。だから自分で持っていく時以外は、外では梅干しおにぎりは食べないかな。梅がご飯全体に混ざっている奴なら食べるけど。お結びは混ぜご飯みたいになっている方が好きだし。」

「香さん何にしたんでしたっけ。」

「私は、炊き込みおこわとゴマ塩よ。ゴマ塩って渋くない、思わず買っちゃったんだけど。家でも作れそうかなって思ったら塩の塩梅がプロは違うらしいわ。」

「塩だけのお結びも美味しいよね。前新潟に魚介類ツアーに行ったんだけど、食べるだけのツアーね。お米のお店に行った時に塩結びを貰ったの。塩だけなんだけど本当に美味しかった。脳にビビッと来たのよ。ああ、うん。分からないよね。凄い美味しかったって事。

 新潟産に限らないけれどお米が美味しいと、塩だけで十分においしいお結びになるんだね。」

「話していたら、お腹が空いてきました。食べましょうよ。」

「そうよね、それじゃあいただきましょ。」


 3人とも少し冷めたお結びを食べだす。買う時はまだ温かかったのだ。

「うん、梅干し美味しい。酸っぱすぎなくってちょうど良いです。」

「塩昆布も美味しいよ。塩昆布って白いご飯にピッタリだよね。」

「確かに、昔一時期凄い流行ったことがあったわね。結構なんでも合うって紹介されてた気がしたけど忘れちゃったわ。ゴマ塩も美味しかったあ。」


 皆のんびりとお結びを食べていた。休みの日の朝で今日は少し眠そうだ。

「今日はアジは来るのかな。この前の仮病と言い、あの子探偵猫みたい。フフッ。

猫探偵アジ、仮病を使い、関係人物同士を会わせて問題を解決に導く。」

「そうね、どこも悪くなかったらしいわ。病院でもよろよろと歩いて見せてたのに。アジの探偵話で漫画とか描けそうじゃない。小説って感じはしないけど。」

「お医者さんは疲れ気味かもしれませんって言ってましたね。まあ元気なら良かったです。夜に来て刺身も食べましたしね。あれは絶対川合さんに会わせてあげた報酬を出しなさいって感じだったです。」

「探偵猫だったか猫が探偵の海外の小説を読んだ事がある気がするのよね。私はちょっと好みがあわなくて読むの止めちゃったんだけど。猫の描写は凄い可愛いかった。」

「それは読んだ事が無かったかも。後で検索してみるわ。」


 食後ものんびりと寛いでいると、9時を過ぎて誰かが【何でも屋】にやってきた。

「そういえば、開店時間書いてないけど、大体皆さん9時過ぎに来てるよね。今度開店は9時過ぎって書いておこっか。」

「そうね、後で書いておきましょ。9時半とかで良いと思う。少し余裕が欲しいわ。」

「そうですね、私お茶入れます。」

 花にお礼を言うと、香と雪は応対をする為に休憩室を出て行った。


 今日は木田さんの奥様と女性が1人いた。

「おはようございます。木田さん。」

「おはようございます。この前はアジを病院に連れていてくれてありがとうございました。暑さバテとかだったのかよく分からなかったけれど、たいした事が無くて本当に良かったです。そろそろ年だから気を付けて、月一回の定期検診に連れて行くことにしました。

 それで今日は、ちょっと相談があってきたんです。こちら、ご近所の小西まちこさんです。」

「初めまして、小西まちこと言います。よろしくお願いします。」

「初めまして、【何でも屋】の佐々木と菊池です。奥にいる彼女が鈴木です。中へどうぞ、座って下さい。」

 皆で中に入ると、花がお茶を置いていく。


 木田さんの奥様が説明を始めた。

「今日はね、こちらの小西さんのからの相談なんです。

 私は、通学路の見守り隊っていう活動をしているんです。ご近所の有志の方と保護者の方と集まって交代で登下校の時間帯に通学路に立つっていう活動なんです。交代制だから毎日いかなくて良いのと当番以外の方は自由参加で、ぎちぎちに固めていないので結構参加してくれる方も多いんですよ。

 そこで先日小西さんから相談されたんですけれど、私よりも若い年代で学校とかの関係者じゃない方にも意見を聞いた方が良いと思って、【何でも屋】さんを紹介したんです。

 川合さんの相談にも、のってあげたそうですし。勿論これはお願いなので、無理辞意等するつもりは全然ありませんよ。」


 微笑みながら言う木田さん。負けじと笑顔で見つめる【何でも屋】の3人。

なんだか楽しそうな微笑みをうかべたまま、香が言う。

「ええ、分かりました。ではまず私達の依頼の受け方について説明させていただきます。」

守秘義務の説明や依頼内容を聞いて断る事もある事などを説明すると、小西さんは了承する。香は小西さんに、依頼の内容説明をお願いした。


 小西さんが説明を始める。

「私には中学生の娘が1人いるんです。最近、1週間前からかしら、様子がおかしいんです。

 朝学校に行く時に、行きたくないとかは言わないんですけれど、何かに怯えて行きたくなさそうな空気を感じる事があるんです。何かあったのかとか最近学校はどうかとか聞いても「別にー。」しか言わなくって。しつこく聞くと怒りだすし、まあ自分も同じ感じでしたので文句は言えませんが。

 土日はお友達と遊びに行ったりしているので、学校内での虐めとかではなさそうなんです。

 学校に問い合わせる事も考えたんです。でもはっきりしない状態で知らせるのは止めた方が良いなと思って。担任の先生はベテランの方なんですけれど、なんていうか真面目な方で大騒ぎにされて何もなかったら、逆に虐めが発生しそうな気がします。だって娘のせいでやっていない事を疑われるんですから、当然娘に対して嫌な思いが生まれますよね。

 ですから、もし虐めだとしても証拠を掴んでからじゃないと、やはり厳しいかなと思って。そもそも本人も虐められている感じではなさそうなんです。お金も物もなくなってないですし特に怪我もしていません。お友達とも普通に遊んでます。

 虐めだと分かったなら、学校はさっさと転校させるなり、フリースクールや海外留学してしまっても良いですし、引っ越してしまっても良いと考えています。

 私の場合技術職なので、別の地域でも実力で職場は確保しますから生活は心配していないんです。

何もわからないまま時間が過ぎていくのでどうしたらいいのかと思って、見守り隊の木田さんに相談しようと思って、通学途中の娘の様子を聞いてみいたんです。」


 小西さんが木田さんを見ると、木田さんが続けて話し出した。

「小西さんのお嬢さんは通学の時は俯いて、結構早足で歩いていってるんです。以前は普通に歩いていましたし元気に挨拶をしていたんですけれど、最近多分2週間位前からだと思うんですけど、挨拶をすると返してくれるんですけれど、いつも急いでいる感じで、たたたって歩いて行っちゃうんです。

 でも、中学生になって挨拶とか恥ずかしがる子も出て来ますし、相談されるまではそんなに気にしていなかったんですよ。」

「私離婚していて、彼とはお互いの愛情が友情のような気持ちに変わっていく事に気付いて、愛がなくなっても夫婦でいるかどうか、色々話し合った結果別れる事にしたんです。

 大ゲンカして別れたわけではないので、彼は娘とも普通に会っていますし、離婚が原因では様子がおかしいわけではないと思うんです。彼は今仕事の関係でアメリカに行っているので1年位会えていなんですけれど、クリスマス休暇には帰ってくるので、その時に娘と過ごす事になっています。

 スカイプとかでもよく話していますし、娘との関係も良好だと思います。私とも親として娘の生活や進路などよく話し合いますし、お互い娘の親として協力し合っています。

 中学生の母娘なので小さな喧嘩はしますけれど、特に問題もないと思っていたんです。でも今は自信が無くて、よく分かりません。

 学校に行く時の様子がおかしい事以外は、特に問題もないんです。通学路に何か原因があるのか、それともやっぱり学校に何か原因があるのか分からなくて。その原因を調べて頂きたいんです。」


 香は、これは後程返答すると即決する。

「そうですね、とても個人的でナイーブな問題が含まれていると思います。依頼を受けるかどうか、後程返答させて頂くという事でよろしいでしょうか。」

 香の返答に頷く2人。

「では、午後連絡させて頂きます。メールと電話どちらが宜しいですか。」

「メールでお願いします。出来れば13時から16時の間が助かります。」

「分かりました。その時間帯にメールでお知らせします。本日はありがとうございました。」

「それでは、よろしくお願いします。」

 挨拶をすると、2人とも帰っていった。


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