第20話母子の気持ちと個性的な父親 ②
2人が帰った後、3人で相談を始める。
「では、【何でも屋】として今回の依頼を受けるか相談したいと思います。
依頼を受けるかどうかもだけど、今回の件を調べるのに、どういう事が必要になるかも一緒に話したいわ。考えられる事が全部出てから判断しましょう。
私は、木田さんの紹介だから依頼を受けたい気持ちはあるわ。中学生の女子の話だし、彼女の怯える原因が通学路でも学校でもはっきりさせた方がいいと思うの。でも、捜査をする事が良いのかどうかとなると微妙よね。
近所の人や彼女の友達に聞いて、そこから話がもれて噂にでもなったら大変だわ。捜査をするなら慎重にやらないと、最悪その事が原因で騒ぎになって、虐めや不登校になってしまうかもしれないもの。」
香の意見に頷く雪。
「今回の依頼は、凄く神経を使わないといけないよね。
娘さんも親が探偵を使って調べたなんてなったら嫌だろうし、母親に対して不審に思っちゃうと親子関係がこじれる原因になる。
調べるなら、通学路の安全性の調査とか、別の理由を付けて行動した方が良いと思う。」
「そうですね、監視カメラを見れたりとか見守り隊の人達から話を聞けたりするんでしょうか。別の理由を作っても嘘がばれた時が、法律に引っかかったり信用がなくなったり大変そうですよね。」
「んー。木田さんに他の見守り隊の人に小西さんのお嬢さんの事を聞いて貰うっていうのも良いかと思ったんだけれど、それだと他の人に彼女の事が印象に残って噂になる可能性が出るし、難しいかな。
調べるのは通学路と学校の事だよね。他の事は関わらないって事で納得してもらう必要があるよね。でも学校の中の事ってどうやって調べるのかな。
断る場合は子供と話し合ってもらった方が良いっていう返事かな。」
雪の言葉に頷く2人。
「とにかく通学路を重点的に捜査する事になるわよね。私達に学校の様子を探るなんて無理だし、中学生に聞いたらそれこそすぐに噂が広まって、あの子学校行きたくないんだってとか、朝暗いらしいよとか言われて大変よ。今度は学校に行かなくなりそうね。」
「俯いて早足で学校に行くって事は、通学路に何かありそうですよね。
なんだろう、いい男がいて恥ずかしいのかな。それとも、自分を見ている気持ち悪い視線を感じるとか、
単純に笑いそうになるような変な物があって笑ったら失礼で必死になって我慢するのが辛くて憂鬱とか。最後のは、実体験です。笑ったら失礼だから笑えないでも笑いたい。週5であると何とも言えず憂鬱になります。」
ちょっと暗くなった花の肩に慰めるように香が手を置く。
「学校の方もお断りしましょうか、どう考えても違和感あるでしょう。私達が中学生に話しかけるって。なに、このおばさん。って宇宙人を見る目で見られそうよ。」
「それに面倒事になりそうですよね。そもそも学校は、まず部外者が立入る事に厳しいはずです。中学生に質問をしたら、親に話す子もいると思います。そこから教師や警察に連絡が言って不審者として扱われる危険もありますよ。私達が警察から聴取された場合は、全て話す事になるので、関係者に確認とかしたら殆どの人に依頼の事が知られるだろうし、面白がって話す人達も出るだろうから、周囲に広まって最悪の結末になりそうですね。」
悲しそうな顔になった3人は、学校の部分はお断りする事に決めた。
依頼を受けるにしても、無理な事は断らないと。トラブルになってしまいそうな事は避けていく事にしている3人。雪が次の意見をあげる。
「通学路で防犯カメラを見せて貰うのも無理そうかな。いっそ、見守り隊に朝だけ私が参加するとか。」
「それなら私も参加しますよ。今日は用事があってお休みで、【何でも屋】の店舗確認するついに見守り隊に来たといって。」
「ねえ、土曜日に学校に行く時もあるでしょう。今はないのかな、それとかクラブ活動とか。朝以外で学校に行く時はどんな感じで通っているのかしら。」
「はるか昔の事でちょっと分からないですね。公立校の学校行事とかで調べてみます。中学生のスケジュールをこの近辺の事を書いてあるブログとか検索して情報を統合すると結構分かると思います。」
「それじゃ手分けしてやりましょう。私は公立学校の行政機関の方から調べてみるわ。」
「じゃ私はブログの方を花と一緒に調べていくよ。」
3人ともスマホで検索をしている。まず香の検索が終わった。
「分かったわ。この地域は月1回土曜日登校している。後で見守り隊のスケジュールをって、募集要項があるわ。土曜日の時にも見守り隊は出ているわね。
じゃあ私もブログ調べるわ。今はネットで大概の事なら分かっちゃう、便利だけど自分の情報に関しては注意が必要よね。」
「そうなんだよね。ブログに写真入りで中学校の行事の事載せてる父親がいるよ。サッカーの大会っぽいね。まあこの辺は微妙なのかな、どうせ大会の方で写真出るしね。
部活の事言ってなかったから入ってないのかな。いくつか見たけれど、小西さんって子はいないな。」
「こっちもです。吹奏楽とダンスとか見たけれど別の子の名前ばかりですね。土日に友達と遊びに行くって事は部活はなさそうですね。」
出てきた情報を纏めて雪が話す。
「それなら平日と土曜日の通学路の捜査って事にするのはどうかな。 結果は分からないけれど。
通学路の調査以外ではこちらは関わらないという事と原因解明できるかは不明でも良ければっ感じで。
というか、難しいと思うんだよね。今回解決するの。」
「私もそう思うわ。学校に行く時位なら学校で何かありそうな気がするもの。まあ、通学路かもしれないけれど。雪の条件でも良いとあちらが承諾してくれたら受けるのが良いと思うわ。土曜日なら見守り隊に参加できるし、その時の様子を見て考えましょう。」
「私も賛成です。私来週、役所に用事があって平日1日お休み取ってる日があるんです。朝早く並びたかったけれど、まあ探偵本読んで待ってればいいし、その日にチェックに行けます。」
「それじゃあ午後になったら、メールで受ける依頼の変更をお知らせして小西さんが承諾したら話を進めましょう。」
2人とも賛成と返事をした。
決まったところで、そろそろ楽しいお昼の時間だ。皆一気に話が盛り上がる。
「今日はどっちにしようか。テイクアウトか食べに行くか。」
「私はこの前行った喫茶店に行ってみたいわ。前見た時から、美味しそうだなって思ってたのよ。あの昔懐かしい感じの喫茶店が。朝も和食だったし洋食が良いかな。」
「美味しいって評判です。特にカレー・ナポリタン・フライ系が。この前の食堂とは違うタイプですね。それじゃあ、喫茶店に行きましょう。
小西さんのメールの返事が了承なら、帰ったらまた取り決めないといけない事もありますし。」
皆嬉しそうに喫茶店へと向かっていく。
「あそこですね、コーヒーもドリップ式で淹れてるお店なので、濃いのが苦手なら他の飲み物の方が良いかもしれません。お休みの日でもランチがあって飲み物選べるんですよ。」
「ケーキセットもあるのね。どうしよう、どれにしよっかな。」
メニューを見て悩んでいる3人。その時雪は発見した。
「私このスペシャルランチにする。ケーキセットで、ケーキどうしよう。」
他の2人もメニューを覗き込む。スペシャルセット、ミニサイズのカレーライス・ナポリタンにエビフライ2本ついたお得感たっぷりのセットだ。サラダとスープに飲み物も付いて、税込み千円。プラス300円で好きなケーキが付く。
2人も早速同じものにしてケーキを選び出す。結局ケーキは皆でシェアする事になった。
店内に入ると、落ち着いた雰囲気の喫茶店だった。外からは古そうに見えたが中は清潔で机や椅子にも傷がない。
3人は席に着くと早速注文した。料理が来るまで他のメニューを見たり店内を観察する。
すぐに料理が出てきた。どれも美味しい。しっかりとした味付けのナポリタンやカレーは昔ながらの洋食屋さんという感じだった。ケーキは見た目より重くなくてふわふわの生地にちょうど良い甘さだ。3人とも全部美味しかったと言いながら、満足した顔でお店に帰っていった。
栄養補給をして元気になった3人は、お店に戻ると小西さんに香がメールを送信した。
香は、通学路での行動調査と周辺調査のみで、原因解明の捜査ではない事。調べた結果によって、原因の選択肢を1つ減らせるかもしれないという事で良ければ依頼を受けますという事を書いた。
小西さんからはそれでいいので調査をお願いしますとの返信が来る。香は詳細の説明と契約内容について相談したいので、都合のいい日を知らせてくれるように頼んだ。
小西さんと香がメールでやり取りしている間に、細かい事を決めていく花と雪。
「依頼内容は、通学路での娘さんの調査と周辺の異変や怪しい事が無いかとかの調査に決定。
来週、通学路の見守り隊に参加してみようと思うけれど、花はいつがお休みなのかな。」
「私は水曜日です。ついでに土曜日も行けます。」
「どうしよっか別々に行くのと一緒に行くのどっちがいいんだろう。」
花は地図を持ってきて机の上に広げると、学校と小西さんの家に付箋を付ける。
「家から学校までの道が結構広い道なんですよね、脇道があります。
幸い家と学校が近くて距離は短いので、2人で別々の所を見るのが良いんじゃないかと思うんです。」
「なるほど、同じ日に行って場所を分担した方が見られる部分も広くなるよね。
場所は木田さんに指定してもらった事にしよう。私達警察じゃないから防犯カメラを見れないのが辛いよね。」
「そうなんですよね、周囲に知られない様に権力を使わずに調べるって大変ですね。」
「何かいい方法ないかなあ。あ、猫を使ったらどうかな。」
「猫ですか。良いですね、それ。私達迷い猫を探し出した実績がありますし、使えますよ。
猫探しをカモフラ―ジュとして使っちゃいましょう。不自然に思われないような猫がちょうどいますしね。」
「そうだね、この前具合が悪くなっちゃった猫ちゃんがね。朝何時もの時間に木田さん宅に来ないと聞いて、見守り隊のついでにあちこち見て回ってることにすればいいよね。病院に行ったばかりで心配だしねえ。」
雪と花が、フフフっと笑っていると、後ろから声がした。
「それいいじゃない。じゃあ土曜日は3人で監視ね。猫探偵アジが、大活躍ね。」
3人揃って笑いだす。すると、外で音がした。
「あれ、小西さんかな。メールで契約内容の確認に17時頃来たいって言われたけど、まだ返信してないのに。」
「少し待っててもらって、作っちゃおう。値段は2日間2回分で2万円かな。」
「そうですね、それでいきましょう。」
2人が同意すると、慌てて雪が契約書を取りに行く。香はドアを開けに行った。
「アジがいるわ・・・・・・。」
見に行くとアジが3人を見つめて一声鳴く。
「アジ、水曜日にあげるわね。そうだ、水曜日はすぐに帰るから上げられないんだった。」
分かっているとでも言っているかのように、その場に座って待っているアジ。
3人とも微妙な顔をしながら、夜用にカルパッチョにする予定だった鯛の刺身を差し出した。
満足そうに食べ終わったアジは、頷くと去っていった。
「どこかで聞いていたんでしょうか、私達の話を。」
「私はアジが私達の話を知っていたとしても驚かないわよ。」
「そうだね、きっと私達には分からない隠れ家とかがいっぱいあってそこで聞いているんだよ。」
「まあ、アジの承諾は得られましたから、契約書も作っちゃいましょう。すぐ作り終わるでしょうしいつでも大丈夫ですよ。」
雪の代わりに花が契約書を作り出す。
「ありがとう、花。じゃあ私今のうちに、晩御飯用にサラダとか作っておくね。」
「じゃあ私は小西さんにメールしたら、木田さんに見守り隊の件とアジの話をメールしちゃうわ。ありがとう、雪、花。」
皆お礼を言い合うと、手早く作業と料理を終わらした。
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