第2話
猫の火葬から1週間経ち、私は高校最後の夏休みを謳歌していた。
8月に入った頃からだろうか、部屋にいる時に不意に猫の鳴き声が聞こえることがあった。不思議には思っていたが近所に猫を飼っている家もあるし、その猫の声だろうと私は気にも止めていなかった。
そんなある日のことだった。
ベッドに転がっていた私の足元を何か生き物が触れていく感覚がして飛び起きた。
足元を見ると黒っぽいトラ柄の痩せた猫がこちらを見ていた。どこかで見たことのある猫だと眺めてみると、その猫は姉の飼っていた猫にそっくりどころか全く同じ模様と体型だと気がついた。その猫は唐突に口を開き、人の言葉で私に話しかけてきた。
「やっと気がついたか!ずぅっと側にいたのにお前、全然気がつがないんだもんよ〜!こちとら時間がないってのにさぁ!」
いやいやいや、流暢に喋りすぎだろう。
驚き過ぎて逆に冷静になってしまった頭の中で突っ込みを入れた。まず猫が喋るってどういうことなんだ。
「えっと、どういうこと?まずお前なんなの?普通に怖いんだけど…」
「いや、お前も気がついてただろ?動物を飼ってないのに部屋の中で聞こえる猫の声、あれ俺様だぞ?」
「いや、なんでドヤ顔!?てかいま喋れてんのに猫の声出してたのかよ!」
しまった。つい普通に突っ込んでしまった。
「いい感じに喋れるようになってきたな、じゃあ改めて自己紹介するけど俺様はお前の姉ちゃんが飼っていた猫のクロだ。知ってるだろ?」
確かに姉の飼っていた猫の名前はクロという捻りのない名前だった。まぁ名付けのセンスがないのはしょうがない。
「いや、うん、確かに知ってるけど…なんでうちにいんの?姉さんの所に行けばいいじゃん。」
「それがさぁ〜、一応俺様死んでるから行く先にも決まりがあんのよ、例えば育ての親又は肉親の所へはいけない、とかな。」
そんな漫画みたいなことがあるのか、と感心してしまった。だがそれでは私のところに来ている理由がわからない。
「じゃあなんで私のところにいるの?」
「お前が俺様の名付け親ってのと、お前なら頼みごとがしやすそうだったからな!」
そう、クロという捻りもセンスもない名前をこの猫につけたのは誰であろう私だったのだ。
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