第1話
姉が5年ほど飼っている猫が死んでしまいそうだという話は何日か前から聞いていた。その時の私は夏休みがもうすぐ始まるというとこに浮かれていて聞き流していた。
そしてその3日後、猫が死んだ。
それは7月にしてはやけに冷たい雨の降る日のことだった。
私の敬愛するいつでも気丈な姉が大粒の涙をぼろぼろと流していたことをはっきりと覚えている。
綺麗に花やおもちゃで飾られた箱の中に入れられた猫を優しく優しく撫で続けながら泣いていた姉を覚えている。
そんな姉をぼんやりと眺めながら私は猫が死んだだけで大げさな、てかペットにも火葬場なんてあるんだなあと思っていた。
火葬が終わり、骨だけになった猫を骨壷に仕舞うときも姉はずっと泣きっぱなしだった。
どんよりとした気持ちと同じような黒い雲の下でしとしと、と雨が降り続いていた。
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