6・ロンドン橋(夜)
テムズ川を横目に、シルバーゴーストは爆走する。
雪面をそんな無理な速度で走っていれば、当然スリップする。
その度にヒューイは慌ててハンドルを切り、危ういところで難を逃れていた。
雪花「ろ、ローラーコースターより戦慄ものですね」
ヒューイ「当然だ。だって俺達はもうレールの上にはいないんだからな!」
その時、ケンタウロスに乗ったマシューが追い付いてくる。
振り返ったヒューイは、青白い顔を笑みの形に変え、「よっ」と気さくに片手を上げた。
マシューはそれに応じず、
マシュー「ヒューイ様、お車を停めてください。さもなくば……」
ホルスターから銃を抜き、ヒューイに突き付けた。
ヒューイ「残念だけど、マシューさんは撃てないよ。だって、俺を殺すわけにはいかないだろ?」
マシュー「それはどうでしょうか?」
マシューは銃口を下方へずらし、躊躇わずに引き金を引いた。
弾丸はタイヤにヒットし、ぱすんと間抜けな音を立てた。
たちまちタイヤから空気が抜けていき、車体が傾く。
ヒューイ「っと、おおぉっ!?」
車は大きくスピンし、ヒューイの操縦とは関係なく暴れ狂い。そして橋から飛び出し、テムズ川へ落下した。
水音を響かせ盛大な水柱が立ち、川はヒューイ達をシルバーゴーストごと飲み込む。
残されたマシュー達は静寂の中、しばらく大人しくなった川を眺めていた。
やがてケンタウロスは、はっと我に返り慌てて喚いた。
ケンタウロス「お、おい! 坊ちゃん達、川へドボンしちまったぞ!? 急いで消防署とかに連絡しねーと!」
マシュー「いえ、その必要はありませんよ」
ケンタウロス「な、何言ってるんだよ!?」
夜闇に包まれた、真っ黒な川をマシューは見下ろして言った。
マシュー「ご主人様は、種馬にしか興味が無いご様子でした。ですから今のヒューイ様を連れて帰っても、何の役にも立たないでしょう」
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