第34話 オレに新たな助っ人が出来ていた

 最近、オレにある助っ人が出来た。


『どもーw はじめましてーw アニメ見て、原作も見たんですがやっぱクソですねーw というかもうあのクソアニメが終わってしばらく話題もなくなってつまんないですねーw 暇なんでコメントしておくんでなんか反応してくださいねーww』


「まーた例のクソコメントか……」


 そこはウェブ版『異世オレハーレム』の感想板。

 そこには様々なコメントが書き込まれているのだが、たまにこのように詳しい内容を見もせずに、以前あっていたアニメの話題を出しては荒らし同然の行為をするクソコメントがたまに発生している。

 まったくこいつらは……ロクに読み込んでもいない的外れの感想もそうだが、こういうただ荒らしたいだけのクソが一番許せない。

 作者はこういうのにはあえて触れず、一切の無視をしているが、こういう害虫はのさばらしてはいけない。

 代わりにオレが正論で追い返してやる。と、レスをしようとした瞬間であった。


「……あれ」


『横コメント失礼いたします。あなたは以前ここ以外にもそうやっていくつもの小説にクソだのなんだのと言って荒らしまわっていたユーザーですね? さすがにそのような行為はこの小説だけではなく、なろう全体の迷惑に繋がっております。あなたのIDは先ほど運営に通報させて頂きました。いたずら半分でこのような行為をしているのでしょうが、あなたがやっていることは十分迷惑行為です。きちんと反省してください』


 そこにはオレがコメントをする前に別の誰かがコメントをしていた。

 実は前にもこのようなことが何度かあり、オレがクソコメントを見つけて、それに噛み付……じゃなかった。

 穏便にレスをしようとしたら、このように冷静にレスをして、迷惑行為をしているユーザーを消去している人物がいた。

 正直、これはオレの仕事だと思っていたのだが、このような助っ人が登場するとは思わず、オレはある種の感謝をこのユーザーにしていた。


「名前は確か……お茶侍さんか」


 名前を確認すると、オレはその人のレスに更にレスを返すことにした。


『お茶侍さんへ、いつもお疲れ様です。迷惑コメントへの対処の方、ありがとうございます。本来なら私の役目なのですが、最近はお茶侍さんのおかげで悪質なユーザーも減り、迷惑な感想も減ってきております。この感想板を利用している一読者としてお礼を申し上げます』


『いえいえ、ジャスティスヒーローさんにそう言われると僕も恐縮です。僕も以前からこの感想板を利用していたのですが、たびたびああした悪意に満ちた迷惑なユーザーの書き込みにうんざりしていました。それに真っ向から立ち向かっていたジャスティスヒーローさんの書き込みを見て、僕もお手伝いを出来ればとこうして迷惑な書き込みへの対処を始めました』


「おお、そうだったのか」


 オレの影響でこのお茶侍さんは行動に出たのか。

 そう言われるとちょっと嬉しくなる。


『ところでジャスティスヒーローさんは最新話は読みましたか?』


『勿論、読みましたよ。最後の主人公とヒロインとの離別には驚きました。あそこからどう物語が変化していくか楽しみです』


『わかります。僕も今後の作者様の更新が楽しみで勉強がはかどりません』


 勉強。ってことはお茶侍さんは学生なのかな?

 そんなことを思いつつ、オレはお茶侍さんと異世オレハーレムについて語りだす。


『書籍版でのジャスティスヒーローさんの好きな場面ってどこですか?』


『そうですね。やはり六巻は鉄板ですが、十一巻のハーレム回も好きです。個人的にハーレム展開はあまり好きではなかったのですが、この巻はこれまでの作者の中でもかなり筆が乗った出来だったと思います。ほのぼの系や癒し系といってもいいほど穏やかな展開で、読んでて思わずニヤニヤしましたよ』


『なるほど、さすがはジャスティスヒーローさんですね。よく見ていらっしゃいます。さすがは異世オレハーレムの信者様ですね』


『いや、信者じゃないですから』


『またまたご冗談を。ジャスティスヒーローさんほど、異世オレハーレムを大好きな人はいないでしょう。僕もこの作品はかなり好きで読み込んでいますが、そんな細かいところまで気づいているのはおそらく作者以外ではジャスティスヒーローさんだけですよ』


『や、ですから私はこの作品嫌いですから。嫌いだから読み込んでるだけですので』


『またまたご冗談を』


『いや、ですから――』


 と、気づくとそんな不毛な言い合いをしていた。

 とは言え、このお茶侍さんは不思議なことに、この異世オレハーレムのファンらしい。

 それもかなり前からこの作品を追っているらしく、それこそ小説一巻からの古株だ。

 明らかにこの人の方が信者と呼ぶべき存在だろうに、しかしなぜかお茶侍さんはオレのことを尊敬している様子でこのように何度もコメントをもらうこととなる。

 そうしてしばらくお茶侍さんとコメントを打ち合っていると、


『なんだかジャスティスヒーローさんとは気が合いますね。もしよければいつか直接お会いして、異世オレハーレムについて色々と語り合いませんか?』


『そうですね。私もお茶侍さんと色々と話したいです』


 と、そのようなコメント打つ。

 無論、それは本気ではなく、その場の勢い、流れ。つい口にしてみたというコメントである。

 田舎に住んでいる人が、東京に住んでる友人から「こっちに遊びにおいでよ!」と言われて「うんうん、いつか行くよ」程度には絶対に実現しない約束。

 そう、この時のオレはそう思っていた。

 この時までは。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る