第17話 オレのクソアニメが終わる

「いやー、例の『異世オレハーレム』のアニメ、やっと終わったなー。誠一」


「……そうだな」


「いやー、最後までクソだったな。っていうか、むしろ虚無アニメだったよな。最後とか内容が無いようで、ただそれまでのヒロインとイチャイチャして終わりとかマジで見るのが苦痛な三十分だったよなー」


「……そうだな」


「おい、今日はやけに元気がないな? もしかして昨日の『異世オレハーレム』の虚無にやられたのか?」


「……そうだな」


 先日、『異世オレハーレム』のアニメが終わり、オレはそのことをいつものように亮と話していた。

 が、オレの方は特に話すことはなく、ただいつものように亮の批判に対し、生返事で頷くだけ。


 はあー、あれで終わりとかー。マジでクソだわー。

 なにがクソって……


「なあ、亮。『異世オレハーレム』のどこがクソだった?」


「へ? そりゃ都合のいいチートとか、無意味に主人公持ち上げる展開とか無駄なハーレムとか……」


「そうだよな。でもそれはあくまで序盤の展開なんだよ。あの作品が本当にクソなのはむしろ、あそこからだったんだよ」


「え?」


 そうだ。あそこからの主人公の「食料がないなら畑作ろうぜ」のわけわからん一言からの農業展開。

 そこからの主人公の都合のいい知識無双と、生産によって一気に国を乗っ取り、主人公王国の始まり。

 ハーレムだけでなく、乗っ取られた民まで主人公を様様と崇めるクソ展開。


 あそこからの主人公が調子に乗る展開こそが、まさになろう小説のクソ展開を煮詰めたようなクソっぷりだったのにそれが欠片も演出されずに終わっただと……?

 ふざけんな! あんな序盤の展開だけアニメにされても、あの作品の魅力(クソ)がまるで伝わらんだろうが!!

 

 納得いかない。全然納得いかない。

 二期を。二期を所望する。

 二期がなければあの作品の本当の価値を見れない。

 やはり円盤。円盤を買うしかない。

 最終巻までのやつはすでに予約したから次はボックスも……。


「『異世オレハーレム』のアニメ、終わっちゃったね」


「……そうだね」


「……二期、あるといいね」


「……そうだね」


 ふと隣から聞こえた声に思わずそう呟いたオレだが、すぐさまハッとなり見ると、そこには何食わぬ顔で読書をする華流院さんの顔があった。

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