第16話 オレのコメントに勘違いが発生する
最近オレには新しい日課が出来た。
『異世オレハーレム』の小説とウェブ版を見返すのは当然の日課として、漫画版、あとは新たに注文したアニメの円盤を見返すこと。
そして、もう一つ最も重要な日課が出来た。
『はじめましてー、アニメから来ましたーw つーかクソアニメ&クソ小説ですねww こんな中学生の妄想以下のなろうテンプレ小説よく書けますねーww クソすぎて笑えますーww 悔しかったら何か言い返してくださいねーww』
『横コメント失礼します。まず、アニメから来たと言っていますがあなたはこの原作のウェブ版または書籍版を読んだことがありますか? 読んでもいない内にクソ小説と言えるのはどういう根拠からですか? 仮にクソだと思うのなら、あなたがそのクソだと思う部分を明確にキチンと述べて批判してください。テンプレ小説という言葉だけではまるで批判になっていません。そもそもどのあたりがテンプレなのかキチンと説明してください。あとクソアニメというのなら作者の小説コメントではなく、制作会社の方にメールをするべきではないでしょうか? まず明確に何がクソなのかキチンと見極めた上でもう一度コメントをやり直してください』
『アニメ見て、小説も途中まで読みましたが主人公が途中でヒロインを見捨てるところがクソすぎて切りました。ハーレム物でヒロイン捨てるとかマジクソです。シネ』
『横コメント失礼ます。まず最初にキチンと最後まで読んだ上でコメントしましょう。あそこで主人公がヒロインを捨てたのは演技であり、ヒロインもそれは承知の上です。つまり物語上、どうしても必要不可欠な演技シーンです。それはそこからしばらく読んでいれば判明することです。物語を全部読んだ上での批判ならともかく、途中で読むのをやめ、しかも自分が嫌いな展開だからと、そこだけをピックして批判しているのは論外すぎます。しかも、それがあなたが作品をキチンと読んでいない上での誤読なら尚更です。作品の批判をするのなら、最低その作品の今あるところまでキチンと読んでから批判してください』
そこは『異世オレハーレム』のウェブ版小説の感想コメント欄である。
アニメ化の影響か、そこは前にも増して悪意に満ちたクソコメントが大量に沸いていた。
ほとんどは冷やかしコメントばかりで内容もロクに読んでいない暇なネット民達がからかい半分で書いているのだろう。
だが、だからこそオレはこうしたクソコメントを見逃せずにいた。
キチンと読んで、その上で明確にどこがダメで何がいけないのか。己の趣味に合わなかったのならともかく、そうではない個人的感情が入り混じったコメントを見ていると非常にイライラする。
オレ自身、批判はするし、この『異世オレハーレム』はクソだと思っている。
だが、だからこそ、何がクソなのかハッキリと答えられる。
それゆえにこうしたおふざけ半分、からかい半分、ただクソアニメの流れに乗ってブームのように叩いているクソ以下のクソコメントは許しがたい。
批判をするならば、その作品にそれ相応の覚悟と時間を捧げる気でいろ。
そして今日もとんだ勘違いのコメントが散乱している。
『まーた『異世オレハーレム』の信者さんが出てきてるよー』
『この人いつも批判コメに返信してるよねー。いくら信者でも気持ち悪すぎー』
『まず最初に私は『異世オレハーレム』の信者ではありません。そこは履き違えないでください。私はこの作品が嫌いです。だからこそ、キチンと批判をして欲しいのです。正しい批判も出来ていない批判はただの罵詈雑言であり、ネットの感想に載せる価値もないものです。そこらへんのところを勘違いしないでください』
『ジャスティスヒーローさんはそう言ってるけれど、絶対この作品好きですよね?』
『違います。嫌いです。そこは勘違いしないでください』
まったくいい加減にして欲しい。
勘違いの批判にもなっていないクソコメントだけならともかく、どうすればオレがこの作品が大好きな信者になるんだ。
どこからどう見ても正しい批判をしている批判者の代表だろう。
これだからアニメ化で群がってくるネットの暇人共は……。
「誠一君。何やってるの?」
と、そんなことをやっていると隣にいる華流院さんが話しかけてくる。
「ああ、『異世オレハーレム』の感想に批判がなんなのか分からずに書いているクズが多くてね。そいつらの相手をしていた」
「ふぅん、そうなんだ」
そうこうしている内にまた勘違いのコメントが増えた。
ジャスティスヒーローさんは作者が雇った自作自演だと?
ふざけんなー! オレとこの作者に接点なんか一つもねえ! 仮に作者に頼まれても誰が鎮火なんてするか!!
そもそもこの作品の作者になんか会いたくもねえよ!
もし仮に作者のサイン本とかもらっても速攻燃やしてやるわ!!
そう思いながら再びコメントを再開していると……。
「そうだ。これこの間のお礼」
そう言って華流院さんがカバンから何かを出す。
それは……『異世オレハーレム』の一巻? なぜに? オレはもう読書用。予備。譲渡用と全巻三冊購入してるんだが。
「これ、作者のサイン入り本なの。その、偶然手に入ったんだけど……やっぱりいらないわよね。誠一君、この本嫌いだし」
「もらう」
即答したオレはすぐさま華流院さんからもらったその本をブックカバーで汚れないように保護し、カバンの中に入れる。
いやー、クソコメの相手ばっかりで嫌な日かと思ったがいい事もあるもんだー。
まあ、オレはこの作品大嫌いだけどね。燃やすのはこの作品が完結して、それがクソみたいな終わりだった時まで取っておくよ。
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