第15話 オレの隣の美少女と合同体育をする

「はーい、今日はB組と合同体育をする。競技は障害物競争。全員、用意が出来たら走ること」


「よ、誠一。久しぶりの合同体育だな」


「だな」


 その日、オレ達A組は隣のクラスのB組と合同の体育をすることとなった。

 とはいえ、スポーツが苦手なオレは先生に腹痛を嘘をついて、少し離れた位置で障害物競走に挑むクラスメイト達を見つめている。

 亮も隣に来たということはオレと同じ口なのだろう。


「ってか、お前何読んでるんだ?」


「『異世オレハーレム』の最新刊」


 亮が興味深そうにオレが読んでいる本を覗こうとしてオレはすぐさま答える。


「あー、あれかー。ってかお前、実はそれ好きなんじゃね?」


「いや、嫌いだ。だから読み込んでいるんだよ」


 亮の勘違いに対し、オレはハッキリと答える。

 全くどいつもこいつも、それを読んでるからと言って必ずしもそれが好きだと思うなよ。


「で、最新刊はどうよ? やっぱりクソなの?」


「そうだな……」


「次、華流院!」


「はい!」


 見ると先生に呼ばれた華流院がコースにつく、その瞬間周りでは声援が起こる。


「きゃー! 華流院さんが走るわよー!」


「素敵ー! やっぱり学園のアイドルだけあってスタイルいいわー!」


「しかもあれで運動神経抜群だからな! いやー、今年の体育祭も楽しみだなー!」


 なにやら盛り上がっているな。

 まあ、それもそのはず華流院さんは学業だけでなくスポーツも優秀。実際様々な部活動に助っ人を頼まれ、そのまま部員入りをお願いされるが本人はどこにも所属していない。

 去年の体育祭でも個人成績はぶっちぎりの一位で、彼女が体育の授業で誰かに負けてるところは見たことない。

 それに体操服を来た華流院さんは確かに美しい。普段だと制服で隠れている部分が体操服だと、その部分が強調され、なんというかエロい。

 まあ、そんなことは今はどうでもいいし、あまり彼女をジロジロ見て意識していると思われるのも嫌だ。というか、オレは単に彼女の隣の席の男子生徒Aであり、それ以上の関係ではないからな。


「それで感想はどうなんだ?」


「スタート!」


 先生の掛け声と共に華流院さんが走り、それと同時にオレが答える。


「そうだな。ぶっちゃけ言うと……よかった」


 ドンガラガッシャーン!


「お、おい! 華流院さんが障害物に当たってこけたぞ!」


「ま、マジかよ! 彼女がコケるところ初めて見たぞ!」


「か、華流院さん大丈夫ですかー!?」


 見るとなにやら華流院さんが盛大に障害物に足を取られてこけてる姿が見える。

 おー、随分と珍しい光景だな。華流院さんが授業であんな間抜けな姿見せたの初めてじゃね?

 僅かに心配して顔を向けるが、当の華流院さんは「だ、大丈夫です。問題ありません」とすぐさまスタートの位置に戻る。


「へえー、マジかよ。面白かったの?」


「ああ、多分今まで出ている中で今回の最新刊が一番面白い出来だったと思う」


 ドンガラガッシャーン!


「おい! また華流院さんがコケたぞ!」


「しかも今度は頭からだ! だ、大丈夫なのか!?」


 んー? なんだろうか、さっきから珍しい光景だな。

 華流院さんが続けてコケるなんて……なんか悪いものでも食べたのか?

 しかし本人は「だ、大丈夫です。問題ありません」と立ち上がっている。


「マジかよ。クソ小説じゃなかったのか?」


「いや、クソ小説だよ。ただ、それでも今回の展開はかなりよかった。今までも都合が良かったけれど、今回はその中でもわりと納得のできる都合の良さだった。ハーレム展開も好きな人は良かったんじゃないかな? ヒロイン達とイチャイチャするシーンは思わず胸焼けしそうなほど甘ったるかったけれど、なろう系のハーレム好きな人にはニヤニヤ物だろう」


「へー、お前が褒めるってことはよっぽど良かったんだな」


 まあ、これまでの『異世オレハーレム』に比べればだがな。

 そんな風に亮に感想を伝えていると、なぜかその度に華流院さんが『ドンガラガッシャーン!』と派手な音を立てて転んでいた。

 なお本人は「だ、大丈夫です! むしろやる気になってます!」と転ぶたびになぜか元気になっていた。

 一体なんなんだろうか?

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