第13話 オレの隣の美少女と食事をする
「誠一君はなに食べる? 私はハンバーグ定食かなー」
「あ、じゃあ、オレもそれでいいです」
その後、ファミレスへと着いたオレは華流院さんと同じメニューを頼み、それを食べ始める。
「それにしても意外だね。華流院さん、ファミレスとか行くんだね」
「たまにだけどね。あれもしかしてお嬢様はこういうところに来ないとか思ってたのー?」
「いや、別にそんなことは……」
いたずらっぽい目で見られ、なぜだか視線を逸らしてしまう。
そんなオレに微笑みを浮かべながら華流院さんは続ける。
「誠一君ってなろう系以外だとなにが好きなの?」
「なろう系以外で?」
唐突なその質問に戸惑う。
なんだろうか。ぱっと思い浮かんだのはローゼス島戦記。スレイヤード。魔術師オルフェン。フォーチュン・シナリオとか。そう伝えてみると――
「あはは、90年代の王道小説ばっかりだね」
そ、そうですけど。別にいいじゃないですか。
そう思いながら料理をかきこむと、
「ひょっとして一昔前のラノベをあげて、同年代のラノベ好きとは違うんだよってアピールしたかったのかな?」
「ぶっ!!」
思わず吹き出す。
た、確かにそういう考えも無きにしも非ずだけど……。
「そういう華流院さんは好きなラノベってあるんですか?」
「私? そうね……。ソードアースオンラートとか、とある物理の禁書目録とか……ラブコメやコメディも好きかしら僕は友達が多いとか、天才とテストと召喚獣とか」
「華流院さんも一昔前のやつっすね。オレのこと言えないじゃないですか」
「ふふっ、そうね」
オレのツッコミに笑顔を浮かべる華流院さん。しかし「でもね」と続ける。
「今だと好きなラノベでSAOとか、スレイヤードとか言われても「確かに名作だね」って答えるよね。けど、それが実際に流行ってた時代ってどうだったかしらね」
「え?」
唐突なその呟きにオレは思わず反応する。
「今だとさ。ラノベをかじってる人におすすめの小説でなろう系を挙げると「なろう系かよ」ってバカにされない? 特にネットとかで」
「あー……」
確かにそれはある。特にネットのそういうサイトとかでは。
「逆に一昔前のスレイヤードとか、SAOとか挙げると前ほどそんなにバカにされなくなったのよね。対象が変わっただけで。小説の面白さは微塵も変わってないのに。なんだかおかしな話よね。今、なろう系をバカをしてる人達ってSAOとかがアニメであってる時、小バカしてる人達もわりといたはずなのよ」
「…………」
華流院さんのその発言に確かにオレも感じる部分はある。
実際、あれらがアニメ化した際、ネットで感想を見たら上から目線のコメントがやたらと多かった。一話なんて特にそうだ。
○○のパクリだとか、前クールの○○の方がマシとか、流行りに乗った典型的ラノベとか。
「なーんか結構勝手よね。時代が変わっただけで、当時批判していた物を急に名作とか持ち出して。あの時はイマイチだと思っていたけれど、今ある作品よりもマシって評価で名作とか言うのおかしくない? それを言うならきっといま『なろう系』ってバカにされている作品も十年後はどう評価に変化しているのか楽しみじゃない」
「…………」
確かに華流院さんのその意見はなかなか興味深い。
いま現在、オレや周りの連中がバカにしている一部のなろう系。だが、将来それに代わる別の『○○系』が現れ、それが今のなろう系よりも酷ければ「なろう系の頃はよかった」という時代が来るのだろうか?
となると今オレが見ている『異世オレハーレム』も将来は名作と言われるのか……?
い、いや、そんなことはない。たとえ時代が変わってもその作品単体に対する評価を読み違えるのは批評家として最もしてはいけないことだ。
オレは現在『異世オレハーレム』をクソ作品と評価している。それを時代の変化で評価を覆すわけにはいかない。
だが、仮にそうしたラノベにおける時代の変化があらば『異世オレハーレム』に対する評価を少し変えなければいけないのも事実。
ならば、やはり今のうちにそうした将来への変化に対しても見方を変えるべきか?
ここ最近はだいぶ読み込んだつもりでいたが、そういう見方で読み返すとまた評価がガラリと変わる。
うん、早速今日から読み直さないとな。
そんなことを思っているといつの間にかオレを凝視している華流院さんと目が合う。
「な、なんですか、華流院さん?」
「んー? いやー、なんだか真剣に考え込んでいるみたいでさー。誠一君なにを考えてたのー?」
「あー、そのー……ラノベのことを?」
「なんのラノベ?」
「……『異世オレハーレム』」
オレがそう答えると華流院さんは一瞬驚いた顔をするが、すぐさまその顔にニヤニヤとした笑みを浮かべる。
「あれー? もしかして私の話を聞いて『異世オレハーレム』について考えてたのー? やっぱ誠一君、『異世オレハーレム』好きなんじゃないの?」
「それはないです」
ハッキリと答える。
しかし、そんなオレの答えに対し華流院さんは「そう」となぜだか満足げに微笑み、ジュースを飲むのであった。
そうしてオレと華流院さんのデート……と呼んでいいのかよくわからない買い物は終わりを迎えた。
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