秘密を追い求めるマイちゃん

「秘密のある女がモテるらしい」

「ふーん」

「……無関心そうだな」

「選挙に行かない人くらい無関心」

「まあ聞きなさい! 調べたところ、秘密がある女性はミステリアスというか妖艶というか、そんな魅力があるらしいのだ」

「なるほど。帰っていい?」

「ダメ!!」

「で? 秘密がある女性がモテるって話がどうしたの?」

「まあつまりだ、私も秘密さえあればモテるんじゃないかと思った次第」

「世の中例外はある」

「ふむ——はっ? どういう意味だ?」

「直訳だ」

「……まあいい、不遜な発言も今回は許してやろう。つまり何が言いたいかというと、私も秘密が欲しいということだ」

「秘密……ね」

「うむ」

「たとえば、不倫・賄賂・クスリ・闇営業・裏取引とか?」

「なんでそんな危険な秘密ばかりなんだ!? もっとあるだろ、マシな秘密!」

「じゃあへそくりとか?」

「それは急にレベルが低くなりすぎだろ!? ミステリアスのカケラもない!」

「キャバクラ通いとか、仕事と称して飲みに行ったりゴルフに行ったりとか?」

「なんでそんな微妙な秘密ばかり浮かぶんだよ……」

「そもそも漫画や小説のような秘密なんて現実にはなかなかないと思うけど。そんなに文句言うならそっちも例を挙げてみなよ」

「誰にも言えない秘密——大金持ちの愛人、とか?」

「そもそも大金持ちの知り合いすらいないくせにそれは無理だろ」

「でももしできれば借金は返せる」

「明らかな金目的じゃないか」

「……うーん。こう考えてみるとミステリアスな秘密ってなかなか難しい」

「だろ? だから諦めなって。マイちゃんはそのままで十分だよ」

「えっそれって告白?」

「訂正。そういうところは直せ」

「……でもさ、やっぱり私、秘密が欲しい。ミステリアスって言われたい〜!! 妖艶って言われたい〜!!」

「いきなり喚くな、叫ぶな! そもそもそんな姿を晒してる時点でミステリアスから程遠いからな!?」

「確かに。じゃあどうすればいいんだ……秘密、欲しい……」

「一応あるじゃん、秘密」

「えっ、あるの、秘密?」

「——あるだろ。身内にも話せない秘密が」

「私にも、そんな秘密が……! ってことは、やった!! 私もついにモテる女性になれるってことね!!」

「まあそう喜ぶな。喜ぶことじゃない」

「ふふふ、これが喜ばずにいれるか? 私もついに秘密のある女性に仲間入りできるってことだぞ……! で? 何なんだ、その秘密ってやつは!」

「前科持ちと借金」


【悲報】マイちゃん既に秘密持ちだった

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