ヒーローを追い求めるマイちゃん

「私は正義のヒーローになりたい」

「僕の知ってるヒーローはやっぱり金だよ、金なんて言わない」

「それは私の別人格が言った」

「今回は通じないからな、それ」

「ってことで、早速ヒーローごっこをしたいと思う」

「言っておくけど僕は参加しないよ?」

「計算済みだ。ということで私の父を呼んである」

「どうもマイの父です」

「こんな形では会いたくなかった」

「私が正義のヒーロー、父さんは敵役ね。父さんは先に舞台裏に行ってて」

「了解した」

「僕は帰っていい?」

「ケイくんは観客です」

「観客してやるからお金を寄越せ」

「普通逆じゃね?」


 〜


 〜


「追い詰めたぞ……悪の将軍アークショーグン!!」

「出たな孤高のヒーロー、マーイ!」


「名前が両方とも酷すぎる」


「私の父の仇……! アークショーグン、お前だけは決して許さん!」

「ぐへへ、お前は一つ勘違いしている」

「なに!?」

「私、アークショーグンこそが、お前の父親なのだよ!!」

「な、なんだと……!」


「そりゃあな」


「くっ、そんなこと認められるか」

「目を覚ませ、マーイ。この世界は私によって侵略される運命なのだ」

「そんなことさせるか! 私はこの日のために日々努力してきたんだ、負けるわけにはいかない!」

「言っておくがマーイ、これは訓練でもリハーサルでもないんだぞ?」


「ところどころ本物のヒーローの歌が入ってない?」


「分かった。ならば、こちらも奥の手を使うしかない」

「ふははっ! 人間の悪あがき、とくと見せてもらおう」

「とりあえずアサルトライフルを使ってオッケー?」


「まさかの現代の叡智」


「ダメ。父さん倒れちゃう」

「大丈夫、ホイミ使う」

「せめてベホイミで」

「MPが勿体無いから嫌です」

「ならお小遣い減らすぞ?」

「降伏します。やっぱり金だよ、金」


「なにを見せられてんだ、僕は」


 〜


 〜


「ケイくん、どうだった私の活躍ぶりは!」

「とりあえず、人は武器と金に溺れてしまうことはよく分かった」

「近所のスーパーのヒーローショーに出れるかな?」

「子供に見せるな、教育に悪い」

「人気の末、朝8時枠に採用されたりして……!」

「世紀末かな?」

「ふふ、グッズも出たりするかな?」

「出るならアサルトライフルのモデルガンってことだよな?」

「大儲けの秘密がこんなところにあるとは……よし稼ぎに稼ぎまくってやる! 売り込みに行ってくる!」

「——結局、世の中金って結論に至るのな」


 そして、前科持ち借金ありのヒーローがここに生まれることになる。


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