金を追い求めるマイちゃん

「やっぱり金だよ、金」

「君さ、前回、金なんかじゃなびかないとか言ってなかった?」

「あれは私の別人格が喋った」

「何重人格の設定?」

「あと五人くらい別の私がいる」

「ついていけん」

「まあ待ちなさい、ケイくん。お金と愛は癒着に癒着を重ねてるのよ。愛はお金では買えないけど、お金で守れる愛もあるってこと」

「ふーん。帰っていい?」

「やっぱり雑!!?」

「お金は大切かもしれないけど、そんな話、僕に全くメリットがないじゃないか。せめてお金を稼ぐ方法とか教えてくれよ」

「分かった」

「えっ?」

「今から稼いでくる」

「えっ?(二回目)」

「任せてくれ、私は未来から来たのだ。競馬を当てるのは赤子をひねるより簡単だ」

「えっ?(三回目)」


 〜


 〜


「——そして堂々と行った結果、全財産が散りました」

「言わんこっちゃない」

「お金って……稼ぐの難しいね……」

「そりゃあな」

「こうなったらやるしかない」

「何を?」

「銀行に覆面して……」

「ちょ。はやまるなよ!?」

「融資してもらう」

「——は?」

「誠意を持って対応すれば、必ず融資してくれるだろう」

「それって覆面する理由ある?」

「覆面プロレスラーとして事務所を自ら立てる。それの融資だ」

「そもそも融資ってお金を稼ぐとはまた違くない?」

「確かに……!」

「バカらしい、帰る」

「でも閃いた」

「犯罪なら通報する」

「まあ、待ちなさい。私は天才的な考えが閃いたのだ」

「天才的な考えとは?」

「まあそれは第五人格の私に話してもらおう」

「まだあったの、その設定」

「……ケイさん」

「えっ?」

「初めまして、私はマイちゃんの第五人格、舞ちゃんです」

「はあ」

「私が思いついた天才的な考え——それはスロットです」

「カイジ読めば? そして地下行き、な」

「私の第三人格、真衣ちゃんはものすごく動体視力が良いんです。その目さえあれば、ゾロ目だって余裕です!」

「ちなみにその動体視力が良いとかいう根拠は?」

「真衣ちゃんがいつも自慢してるんです!」

「ふーん……」

「どうかしたんですか?」

「あのですね」

「?」

「みなさんって多重人格なんですよね?」

「はい!」

「なら目の視力や動体視力だって一緒なのでは?」

「あっ……」


 マイちゃん曰く、しばらく舞ちゃんはショックから立ち直れなかったらしい。また、真衣ちゃんは適当な事を言ったとしてあらゆる人格から罵倒されたと言う。その後、どうお金を稼ぐか自問自答会議が続いた結果、覆面強盗として書類送検された。



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