第2話 霞んだ青空を見上げて

 縁側に腰を下ろさせてもらい、庭先の植木や花壇を眺めながらぼんやりとお茶を啜っていた。

 のんびりと羽根を伸ばすつもりで、縁側に座ったのだが、一向に落ち着きを感じることは出来ていない。

 心の中では常に葛藤があったからだ。


 ちゃんと、話さないと。

 今回の異動のことを。

 どうして、実家に立ち寄ったのか。

 その理由を、話さないと…。


いったい、何度目だろうか。

思えば昨日、館林基地を出発して、列車に乗って横浜を目指した時から、ずっと“ちゃんと話さないと”と念じ続けていた。


雄吉「はぁ。」

溜め息が出てしまう。


 ちょっと、ここまであったことを整理してみようかな。


そう思い、薄く霞んだ青空を見上げる。



 つい一週間ほど前のことだった。

昼食を食べ終わって、仲間と談笑しながら食休みしていた時だった。突然招集が掛かったのだ。

何事かと思いながら、格納庫前の広場へ走り、横一列に並んで上官の登場を待った。

そして、上官が三人、険しい面持ちで現れては、自分たち横隊の前に立って発した。

上官「貴様らも知っての通り、ここ最近、アメリカの空襲が著しく、更には沖縄方面の戦況も芳しくなく、我が軍の勝敗は難しい状況になりつつある。」

 それは知っている。きっと、説明以上に我が軍は劣勢だということも、なんとなくわかっている。

頭の中でそう感じながらも、じっと無表情のまま上官の話に耳を傾ける。

上官「そこで、新たに特別攻撃隊を組成し、連合国軍へ一矢報いることとなった。」

 特別攻撃隊…。

その戦法のことは、よく知っていた。爆弾搭載の戦闘機を敵方の軍艦へ急降下、激突させて、爆破するのだ。もちろん、操縦士は戦闘機諸共爆発に巻き込まれて死亡する訳だが、敵方も、まさか飛んでる戦闘機が自艦目がけて突っ込んでくるとは思わなかったためか、想像以上に戦果が得られた戦法でもあった。


まさか、ここにもその募集がやってくることになろうとは。いつかはと、予想はしていたが、いざ実際にやってくると怖さを感じるものだ。

上官「我が隊からも、特別攻撃隊へ参加する勇敢な者がおらんか、募集を掛けることとなった。誰か、我こそはという隊士はおらんか?」

一度左右を見渡してしまう。誰か挙手する者が出るだろうか? そんな期待を持ってしまう。しかし、誰一人として挙手する者は無かった。

突然の特攻隊の募集に、みんな戸惑いがあったからだろう。

せめて一晩、いや1時間でも考える時間を下さい。

そう申し上げたいくらいだ。

上官「よく聞こえなかったのか? ならばもう一度言う。誰か我こそはという勇敢な隊士は居らぬか!」

語尾を強めて発言してきた上官の言葉には、さっさと全員挙手しやがれとでも言いた気な苛立ちすら感じる。

わかっている。上官の立場としては、部下が進んで特別攻撃隊に立候補してくれたらどれだけ気が楽なことか。

わかっている。だけど、すんなりとそれは出来ない。惑いがあるからだ。御国のために出来る、これ以上の御役目は無い。全う出来れば神と崇められる存在になれる。しかし、挙手しなければならないのであっても、せめて気持ちを整理する時間が欲しい。気持ちを整理して、惑いが消えた自信に満ちた万全の状態で、挙手したいのだ。

だが、それが許されそうも無いことも、薄々わかっていた。

「はい!!」

隊員の誰かが、元気良く声高らかに、挙手をしていた。

それに続くように、他の隊員も「自分も!」と勢い良く挙手をする。そして、他の隊員、他の隊員と、その勢いは一気に増していき、我先にと挙手を急ぐ。いつの間にか、この流れに遅れてはならないような焦りを背筋に感じはじめ、手を高く上げてしまっていた。

上官「皆、よく言った!! 勇敢な部下をこれだけ持つことが出来たこと、誇りに思うぞ。後ほど沙汰をする故、しばし居室で待機せよ。以上。」

敬礼をしながら、雄吉は背中に気持ち悪いほどの汗が滲み出ていることに気が付いた。


 それからは、あっという間の出来事だったように思う。あの後すぐ、上官に一人一人呼び出されて、個別に面談を受けた。本当に特攻隊員になることの覚悟があるのか、確認を受けたのだが、ここで「覚悟出来ていません」なんて言えるような状況ではなかった。

 そして、二日前。

昼過ぎに再び上官に呼び出されて執務室へ行くと、辞令を受けることになった。

上官「貴殿を、明野あけの航空師団へ転属。特別攻撃隊へ編入する。」

辞令を読み上げる上官の声を聞きながら、静かに運命を受け入れる態勢になっていくような気がした。

もう、こうなる運命だった。それに抗おうなんて、はなから間違っている。これは、海村雄吉の人生の道そのものなのだ。

不思議と、惑いは涌かなかった。

残る自分の人生が、そう長く続かぬことがわかったとしても、何も異議は出ないのだ。

雄吉「…謹んで、お受け致します。」

敬礼をする。

そんな雄吉のことを見届けた上官はというと、ひと呼吸置いてから椅子に腰掛けて、直立不動の雄吉を見上げてくる。

上官「明日、ここを発て。」

雄吉「え?!」

まさか明日、この基地を出発するように言われるなど、予想もしていなかったことで取り乱す。

雄吉「確か辞令には、4月24日付けで赴任するように書かれていましたよね?」

上官「そうだ。」

雄吉「まだ19日ですよ? いくら三重県が遠いからと言っても、二日あれば行ける距離です。」

不可解なことに対する理由を早急に求めようとする雄吉を諭すかのように、上官は右手で制してきては、不敵な笑みを雄吉に見せつけてくる。

上官「さすが、地図が全て頭の中に入っていると噂されるだけのことはあるな。」

雄吉「お、恐れ入ります…。」

幼い頃から地図を眺めることが大好きだったためか、今では日本全国の地図や地形、距離感覚、鉄道網、道路網、航路などをほとんど覚えてしまっていた。それが仲間伝いに、「海村の頭の中には日本地図が入っている」と囃し立てられ、いつしかその噂は上官の耳にまで届いてしまっていたのだ。

上官「確かにここから直接明野基地まで行けば、二日もあれば十分だ。だがな、それでお前は良いのか?」

雄吉「え?」

未だに意図を理解しない雄吉に呆れたのか、それとも話の中に間を作ったのか、上官は静かに溜め息を吐いてきた。そして、しっかりと雄吉の眼を見詰めてくる。

上官「実家は横浜だったな?」

雄吉「はい。えっ?! ってことは…!」

ようやく、明日出発することの意図を理解した。

上官「特攻隊に行く前に、親御さんにその顔見せに行って差し上げろ。もしかしたら、これが最後のことになるかもしれん。」

最後のことになるかもしれん。

その言葉が示す意味が、とても重くのし掛かってくるように感じる。

雄吉「ありがとうございます。」

深々と礼をして、再び上官の方を見ると、上官は視線を雄吉から逸らしており、虚空でも見詰めるかのように斜め上に構えていた。

上官「わかったなら、さっさとに戻れ。」

雄吉「了解!」

ここで言うとは、出発の支度を示している。さっさと荷物まとめて、実家に寄ってこい。そういう意図があったと解釈して、雄吉はいそいそと執務室を出た。


 そんな経緯で、翌日の4月20日の夕方に館林陸軍基地を出発して、館林駅から汽車に乗って横浜へ向かったのだった。

 汽車に揺られながらも、雄吉は何度も上官が話してきた「これが最後のことになるかもしれん。」という言葉を思い出していた。


 そうだったよ。僕が特攻隊へ行ってしまうことで、家族、特に両親は、どう思うのか、あまり考えてなかったよ。

 考える余地なんてなかった。

 だけど、これが、両親や兄弟姉妹たちと会える、最後のことになる。

 お別れになる。


 どうやって、伝えようか。

 喜んで、「僕はやりましたよ!」って感じに、明るく言おうかな?

 それとも、「特攻隊へ行く栄誉を得ました」と、真面目に言おうか?

 どっちにしても、母さんは泣いてしまいそうだ。父さんはきっと、表面上は喜んでくれそうだ。「でかした! よくやった!」と褒めて下さるに違いない。だけど、後々、人目を避けて悲しまれることだろうな。僕のことを大学にまで行かせてくれて、将来は博士か大臣か、なんて、こっちが恥ずかしくなるくらい、自慢に思ってくれていたのに。その期待を、裏切ってしまう…。


 どうやって、話そうかな…。


 どうやって、伝えようかな…。


 ちゃんと、話せるかな…?


溜め息を何度も付きながら、同じことを繰り返し考える。流れゆく車窓すら、目に留まらぬほどに。

 乗り物に乗ることは大好きだった。乗り物に乗って、のんびり移り変わる景色を眺めることが好きだった。それなのに、この日はまるで景色なんて眺めていられなかった。いや、厳密にはずっと車窓に釘付けになっていた。しかし、目に映る全ての景色が、ただの背景にしかなっていないように、何も記憶に残らないのだ。


 その日は、高崎駅近くの旅館で一泊した。

宿の近所の食堂で夕飯を食べているとき、ラジオのニュースで沖縄戦線の状況について報道されていたが、なかなかに楽観的な言葉で纏められていることに違和感を覚える。

つい三日ほど前にも、沖縄近海に布陣しているアメリカ軍の戦艦目掛けて、特攻隊が出撃していたのだ。ここ2ヶ月ほどで、いったいどれだけの特攻隊員が御国のためにと命差し出して戦火を灯したのだろう。沖縄に駐留する地上部隊も、日に日に北部へと追いやられている。こんな状況で、とても我が軍優勢なんてことは考えられない。

 ニュースは更には、六日前と四日前に起きた東京の空襲の被害状況についても報道してきた。思っていたよりも被害が大きいようで、皇居の一部も焼けたらしいと、館林陸軍基地内で聞いていた。当日は、仲間たちと戦闘機に乗り込んで埼玉県上空まで飛んで行ったが、既にアメリカ軍の爆撃機は撤退した後のことだった。ただ、遠方の、すなわち東京方面の上空が明るい橙色に染まっていたのには、背筋が凍るほどの恐怖を覚えることとなった。(そんなことも相まって、雄吉は横浜へ向かう際に東京都心を迂回するように、高崎、八王子などの郊外部を通る経路を選択したのだった。)

 この戦争において我が軍が劣勢であることは、誰もが気付いてしまっていることだろうが、それを闇雲に口には出来ない。みんな表面上はまだまだ行けると、威勢の良い態度を示しているが、どこまで本気で言っているのだろうか。


 僕が特攻隊に往って、軍艦を見事沈められたとして、どれだけの戦果になるのかな?

 一隻の軍艦を沈めても、アメリカはまた他の軍艦を連れてくるに違いない。軍艦どころか、多数の戦闘機を格納した空母が何隻もやってきてしまって、更なる空襲を受けて日本が焦土と化してしまう日もそう遠くないだろう。


 どれだけ意味がある攻撃なのか、僕にはわからない。

 だけど、このまま、やられっぱなしで終わるのは悔しい。日本男児としての意地を、見せつけてやらなければ!


 だから、ちゃんと、話さないと…。



翌日、4月21日。

 高崎から省線の八高線はちこうせんに乗り込んで、八王子はちおうじまで向かう。八王子まで来てしまえば、後は横浜線で横浜へ向かえば良い。幸い、実家は横浜線の沿線にある。夕方になる前には、実家に戻れるだろう。

 だが、やはり心のうちに騒めきが残る。まるで落ち着きを知らない。


 ちゃんと、話さないと…。


 しっかりと、話さないと…。


 これが、最後だってことを…。


 遠くに浮かぶ、秩父ちちぶ山地の山並みを見詰めながら、溜息をつく。

横浜線に乗る頃には、決心が付いてくれるだろうか?


 いや、決心しないといけないんだ!

 絶対に!!


しかし…。

 結局、決心は付かなかった。

横浜線の電車を降りて、故郷へと続く丘の道を歩いて行くうちに、懐かしい風景に戯れ、一時的に惑いが消えていた。純粋に、帰郷したことを楽しんでいたのだ。

 

 でも、落ち着かなかった。

 決心、出来なかった…。




薄く霞む青空に、ポカンと浮かぶ軽そうな白い雲がのんびりと流れていく。

雄吉「はぁ。」

何度目だろうか。また溜息が出てしまった。

頭を抱えて項垂れる。


 僕は、なんて弱い男なんだ…。


 本当に、臆病過ぎて、情けなくなる…。


頭を上げて、大きく深呼吸する。

もう一度、霞んだ青空を見上げる。


 特攻隊へ往ったたちは、このこと、両親や家族に、話せたのかな…?


同じ特別操縦見習士官(特操とくそう)の二期生だった仲間の中には、既に特攻隊員として出撃して、名誉の死を賜ることが叶った者も居る。新聞に掲載されていた特攻出撃者の名簿の中には、特操の頃に仲の良かった仲間の名前だって載っていたこともあった。つい最近まで、一緒に過酷な訓練を乗り越えようと頑張ってきた仲間の何人かが、既にこの世を去っているのだ。英霊として、靖国に祭られているのだ。


 不思議だな。この前まで、すぐ隣に立っていたアイツらが、もう、影も形も消えて、神として崇められる存在に昇天してしまっているなんて。


 僕も、もうすぐ、そこへ往くのか…。


 不思議だな。


薄桃色が滲み始めた霞色の空には、また白い雲が流れてくる。ずっと、白い雲が現れては、やがて消え去り、そしてまた、現れる。


 僕たちの人生も、あの雲と同じなのかもしれないなぁ。

 ひょいと現れたと思ったら、すぐに消えていく。

 そしてまた、新たな雲がやってくる。


ぼんやりと、そんなことを考えていた。

そんなときだった。


 門の方から、農作業用の道具を入れた籠を背負った老婆がゆっくりと入ってくる様子が見えたのだ。

祖母の志麻しまだった。

雄吉「おばあちゃん!」

雄吉は傍に転がっていた草履を雑に履いて、祖母の所へと駆け寄る。

志麻「んん? もしかして雄吉かい?」

祖母の背後に回って、籠を持ち上げる。

雄吉「そうだよ! 雄吉だよ!」

祖母から籠を取り上げると、雄吉は笑顔を見せながら祖母の前へ立つ。祖母はと言うと、皺しわは顔をさらにしわしわにさせて笑みを浮かべていた。

志麻「そうかい。お帰り、雄吉。」

雄吉「うん! ただいま!」

不思議だった。母も妹の寿実も、自分が帰ってきたことに心底驚いた様子で、しばらく自分の姿を見ると呆然としていたのだ。しかし、祖母はまるで呆然とした様子を見せてこない。それどころか、突然帰宅したことをまるで驚いていないのだ。

志麻「よく帰ってきたねぇ。」

雄吉「うん。おばあちゃんは、僕が突然帰ってきてしまったこと、驚いてないの?」

志麻「何故だい?」

雄吉「え?」

祖母はホホホと笑い出す。そして、また歩き始め、先ほどまで雄吉が座っていた縁側の方へと向かい出した。雄吉もその後ろから、ゆっくりと祖母に付いて歩く。

志麻「ここは海村の家じゃ。海村の人間だったら、ここを出ていくときは見送るし、帰ってくるなら迎えるだけじゃ。帰ってきたかったらいつでも帰ってくるとええ。」

雄吉「うん…。ありがとう。」

何故だか、祖母の言葉に安堵する自分が居た。別に海村の家から破門されてしまった訳では無い。絶交されたわけでもない。なのに、「いつでも帰ってくるとええ」という言葉を受けて、雄吉はたまらなく嬉しくて、安心したのだ。

縁側の上に腰を下ろした祖母を真似て、雄吉もその横に座り込む。

すると、祖母は雄吉のことを確かめるかのように、じっとその姿を眺めてきた。

志麻「立派に、軍人さんになったんだねぇ。」

雄吉「え? うん。」

着ている陸軍の制服を見て感じたことだろうか。

志麻「海村の家から軍人さんが出おるとはね。光栄なもんだよ。」

雄吉「そう? でも、僕一人の力なんて、大したことじゃないよ。御国の為にって、いろいろ頑張ってはいるけど、それがどれだけの力になれているんだか、さっぱりだよ。」

祖母はまた、ホホホと笑ってくる。可笑しなことでも言ってしまっただろうか?

志麻「軍人さんは、この大日本帝国を支える御方たちじゃ。この帝国を支えているのは、一人の力ではない。多くの人の力があって、初めて支えられるんじゃ。その力に、大きいも小さいもありはせん。きっとお前の力も、この国の為に役立っているんじゃ。」

雄吉「そうだと、いいな。」

言いながら、雄吉は足元の見詰めてみた。

ちょうど悩んでいたことでもあったためか、少し恥ずかしく感じたのだ。

志麻「あたしはね、お前にこの国を託したんじゃよ。外国に攻め込まれているこの帝国の未来を、お前たちにね。」

雄吉「え?!」

突然何を言ってくるのだろうと思い、咄嗟に祖母の顔を見ていた。祖母は相変わらず、顔をしわくちゃにさせながら笑顔で雄吉のことを見守るように眺めている。

志麻「これから先、何が起ころうと、お前たちが一生懸命戦ってくれているこの日本の大地で生きていく。命ある限り、何度でもこの大地で立ち上がるさ。」

祖母は、ハハハと豪快に笑い出す。

一方、雄吉は祖母の言っていたことがはっきりと呑み込めていなかった。どういう意図がある言葉だったのだろう。


 おばあちゃんは、僕が外国と戦っていると思っている。だから、どういう戦果であれ、この日本で生き続けると言ってくれている。

 僕が、命を懸けて戦おうとしているから…。


 うん、そうだよ。

 守りたいものがある。だから、戦う。

 僕の命が灰になろうとも、守りたいものが守られるなら…。


 もし、僕が死んだあとの日本が見られるなら。

 残してしまうことになる父さんや母さん、姉さんや妹たち、弟たち、おじいちゃんにおばあちゃん、友達は、いったいどうなるのだろう。

 この劣勢の中で、どんだけ抵抗しても日本が勝てることは無いだろう。

 もし敗けてしまったら、いったいどんな世の中になってしまうのかな?

 そこで、みんなはどんな過酷なことを乗り越えなければいけなくなるのだろう。


 未来の日本を見てみたい。

 そこで暮らしているはずの、僕たちの子孫が、幸せに暮らせているのか、知りたい。


 どうせ死ぬんなら、あの世へ往く前にちょっとくらい未来の日本を見せてほしいもんだぜ。


 ま、あり得ないことだけど、ね。


桃色に霞む空へ、不敵な笑みを見せつけてやる。

そして、雄吉は祖母の方を見る。

雄吉「出来る限りのことは、するから。だから、おばあちゃん、長生きしてよ。」

真剣な眼差しで、祖母に告げる。祖母はと言うと、ニコニコと「わかったよ」と言っているような温かな笑みを浮かべていた。

志麻「了解じゃ。」

ハハハと、また豪快に笑い出す祖母。

この祖母が居る限り、たとえ日本が敗戦国になったとしても、海村の家は大丈夫そうだと、なんとなく雄吉は感じた。




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