第5話
雪乃は相変わらず本を読み続けているし、空の色は変わらず青い。
ここでは時間も過ぎないのか、と思い携帯の画面を見た。
しばらく眺めていたが、時間が変わる様子はなく、完全に時は止まってしまったようだった。
本を置く音がして、雪乃が振り返りざまに言った。
「相原さん」
「…お前は本当に俺と同じ側の人間か?」
本を読むフリをしてずっと考えていたことをひとつひとつ整理していくことにした。
「同じ側とは」
「あの屋上から来た生徒ってこと」
「それはさっき言いましたよね、私も屋上からここへ来たと」
「お前以外の生徒がいないのは不自然じゃないか」
「…相原さん、それ以上は」
「これは俺の勝手な予想だが…ここはお前の精神世界か?」
「仮にそうだとして、それでは私はどういう存在になるのですか」
「別人格…的な?」
「土居雪乃の別人格が未来空間を作ってそこに相原颯斗を閉じ込めた、あなたはそう推理した」
「ああ、そうだ」
「面白い人ですね、相原さんは」
「茶化すな」
「答えを知って、それでどうするつもりですか」
「俺は元の時間に帰る。ここは俺の時間じゃない」
雪乃はあからさまにため息をついて言った。
「…半分くらいは当たっていますよ、その推理」
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