第4話
ここに来たはいいものの、なにもする事がない。
床をぼーっと眺めて、天井を眺めて、最後に窓の外を見る。
来る前とほぼ同じ風景なのに、今日は7月31日で尚且つ未来である。
不思議なものに巻き込まれてしまったなあ…と思いつつもこの非日常を心のどこかで楽しんでいる俺がいた。
暇なのは雪乃も同じらしく、俺と同じように机に座って頬杖をついている。
そして時々、窓の外を見る。
「なあ」
暇が限界に達し、俺は雪乃に話しかける事にした。
「お前は本当に、この世界について何も知らないのか?」
雪乃は答えなかった。
「俺もお前も、ずっとここにいるわけにはいかないだろ」
雪乃が振り返った。
「私たちにできることは少ない」
彼女は澄んだ声で言った。
やはり彼女はなにかを知っている。
知っていて、黙っている。
「俺は昨日に帰りたいんだ、お前は帰りたくないのか」
この質問には、彼女は答えなかった。
学級文庫の棚から一冊の小説を取り出し、ぱらぱらとページをめくり、読み始めている。
仕方なく俺も本を読む事にした。
不思議なことに、ここでは、生理的現象が全く起こらないのだ。
お腹は空かないし、トイレに行きたいとも思わない。
ここはただの異世界ではない。
俺は確信した。
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