第3話
「あなたの叫びが、相原さんをここに呼び寄せた、そうなんですきっと。つまらない、って言いませんでした?」
「きっと、ってそんな適当な理由で時間を歪められるはずがないだろ…確かに言ったけどさ」
「相原さんは屋上から来たんですよね?私も屋上から来ました、つい先ほど」
俺は何となく理解した。
このよくわからない空間に、何人かの生徒たちが飛ばされているのだと。
目の前の彼女もその一人で、俺と同じく屋上の噂につられたのかもしれない。
「…あんた1年生なのか」
俺は彼女の上靴の色を見た。
それは赤色で、1年生である証拠だった。
「はい、だから敬語で話しているんです。私は雪乃といいます」
「雪乃、か」
「いつまでこんな空間があるか知りませんけど、終わるまで宜しくお願いしますね、相原さん」
俺はこのとき気がつかなかった。
なぜ彼女が俺の名前を知っているのかを。
「なあ、ずっと気になってたんだが、聞いていいか」
「私に答えられる事なら」
「お前、図書室の返却コーナーで俺から本を受け取らなかったか?延滞の」
「何の話ですか、私は図書委員ではありません」
「…気のせいか」
「ここに来る前にも面識があったと言いたいのですか?」
「お前によく似たやつを見かけたんだ」
それから俺は彼が言った言葉やその後すぐに消えてしまったことを雪乃に話した。
彼女は不思議な顔をして聞いていた。
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