第2話

すとん、と俺はどこか知らない場所へ着地した。

いったい何が起きてどこに来たのか。


誰か説明してくれ、と小さく呻いた。


そこはさっきまで見ていた景色とほとんど変わらない、世界だ。

屋上に踏み入れたはずの足は、なぜか教室の床を踏んでいる。

瞬間移動を疑って、俺はその教室を細部まで確認する事にした。


「(今日は7月30日だ…ここは)7月…31日?!一日進んでる…」


何度見てもその黒板には「7月31日」と書かれている。

日直の名前は書かれていない。


「何だよこれ、どこなんだよここは」


近くにあった机と椅子を、蹴飛ばした。

つま先に鈍痛が走る。


その時だった。

閉まっていた教室の扉が開いて、誰かが入って来たのは。


「お行儀が悪いですね…さすが男子です、相原颯斗さん」


短い黒髪の、声からして女子だろう、女の子がいた。

それは、さっき図書室で見かけて、消えたあの彼に似ている女子だった。


「あなたは今日からこの世界の住人です…なんちゃって」


言いながら彼女は勝手に照れて、さっと真顔になった。


「い、今のは、言ってみたかっただけです、ほらよくいるじゃないですか…異世界?に迷い込んだ主人公を迎えるヒロインが」


彼女は話を進めているが、俺は一言も発さずに床に座ったままだ。


「正確にはここは異世界ではありません。安心してください」

「いや、異世界じゃないならここはどこなんだよ」


俺はやっと声を出して彼女に聞いた。


「…黒板は見ましたか」


彼女は黒板と俺の顔を交互に見た、そして言った。


「ここは、1日先の、未来です」

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