第5話 第一発見者の証言・再び

第一発見者の証言・再び


 またあの長身の女がやってきた。今度は、外国人を連れて……。

 ティーンエイジャーぐらいの年齢だと思うけど……不機嫌そうな顔をしているわね。

 こんな子を連れてきて何になるというの?


「ひとついいですか?」


 外国人の少女はわたしにそう聞いてきた。


「なんですかお嬢さん?」


 わたしの言葉に、彼女の眉間のシワが深くなった。


Signorinaスィニョリーナ(ミス)・アンダーソンは、mancinoマンチーノでしたか?」

「まッ、マルチ?」


 何いっているのかしら、この子は? どこの国の言葉なの?

 まって、ひょっとして変な質問をして、わたしのボロを誘っているのかしら――

 そんな小賢しいことを考えているの?


「スターリング。マンチーノは何ていうの?」


 と、少女は長身の女性に向かって左手を振って見せた。


「――左利き」

「左利き……なるほど、ミス・アンダーソンは左利きでしたか?」


 左利き……ようやくそこを突いてきた。

 わたしが仕掛けたヒントを気がついてくれたようね。


「ヒラリーは、たしか……左利きだったと思います」


 彼女の左こめかみの弾痕、それが指し示すようにヒラリーは左利きだった。

 それでは、ますます自殺と間違えられてしまう。なので、わたしはある仕掛けをした。

 このふたり、探偵ごっこでも楽しんでいるようだけれど……どうやら警察の人よりも、この子に期待した方がいいかもしれない。

 果たしてこの子は見つけてくれるのかしら――


「あっ、あと……Tabaccoタバッコ(タバコ)を吸われますか?」

「えッ!? わたし? 吸いませんわ」

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