『空中そうめん流し』 《後編》の《上》*
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室長は、必死に使える通信手段をさがしたが、みな、ぶっ壊れている。
そこで、乱暴君が、突然言い出した。
『おあ。これ、つかえます。ぼくが持ち込んでた、アマチュア無線機。おじさん特製の真空管式で、違法無線だけど、すっごい頑丈で、なおかつ『強力』です。これで、東京本社の周波数に割り込みます。あっちの通信機が生きてるかどうかですが、きっと防御済みの機器をもってますよ。』
『あなた、どれだけ私物持ち込んでるの?』
『たいしてないです。これも、実家に持って帰ろうと思って寮から持ってきてただけ。やっていいですか? ここの非常電源使います。アンテナも。ちゃんと、使えるようには、ちょと、手は加えてたし。』
『なんだそれはああ~~! もう。いいわ、このさい、やりんさい。』
『あいよ。よっしゃ。行きますよお~~。ああ、本社、本社。こちら、そうめん流しコントロール・ルーム。応答願います。ああ、本社、本社。・・・・・応答しないと、園長の命はないかもね。ああ、本社どうぞ。・・・・・・』
『ぶ。あんたね!』
室長が、あせった。
『こちら、本社、通信室。こらあ、何言ってる! 園長を解放しろ! クーデターか?』
『かしなさい。まったくもう。あの、室長です。すみません、他に連絡手段がなくて、乱暴くん、いや、技術主任の『無線機』を借りています。それより、すべての機器が稼働不能。緊急電源が一部稼働してるだけです。あまり持ちません。お客様が空中で動けなくなっています。原因は、高空での大きな核爆発のようです。さらに本社の《宇宙ステーション》がここに、落下して来る危険性がありそうなのですが。対処方法を示してください。』
『ああ、こちら本社。連絡するまで、待機、どうぞ。』
『急いでください。時間がない。』
『・・・・・・・・・・』
『くそ。切れた。いやあ、切ったのかも。意図的に。』
『なによ、それ。』
『死ね。と・・・・、ぼくは、『いくら事件』の時に、同じように扱われたぞな。(『いくらで銀河ながしてみたいなわが茶碗』参照)』
『『いくら事件』は知ってるけど、ここは、ただの遊園地よ。』
『いやあ。意外と、何かあるぞな。ここは。会長肝入りの場所ですぞな。』
『あんたね・・・ああ、でも、まずお客様を下ろさなきゃ。』
『あの、もし、・・・・重力制御に使ってる電源は、太陽さんとかから、蓄電したものぞな。普通なら朝まで十分だけど、ほら。急速に減ってる。どっかで漏電してるか、外から盗まれてるか、してる。なんせ、あと3時間くらいしかもたなさそうぞな。』
『早く言いなさい。重力制御できなくなったら、落ちるじゃないの。』
『あい。ま、さかさまぞな。』
『しかたない、空中車両総動員して、地上に降ろしましょう。』
『全部で、250人いるぞな。使える車両は小型6台しかない。ピストン輸送して、まにあうかどうか、ぎりぎりぞな。前からぼくが言ってたように、あなろぐな脱出装置がないのは、やはり、致命傷ぞな。本社が判断して、『大型車』出してくれればいいけどな。』
『文句は後から言え! すぐやるぞ!』
『了解。』
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ここは、東京本社、コントロールルームである。
『常務。まずいです。太平洋地域全体の電子機器がダウンです。想定外の規模だったので、軍事用も相当やられているとのことで、世界中、がたがたです。爆発した《ごみ処理場》の残骸の多くは、大気圏で燃えますが、一部、燃え残りが落下してきています。まもなく、首都圏にも落下。あおりを受けた無人ステーションが、6時間後に落下しますが、こいつは、ばらして、地上に帰す予定だったので、やたらに頑丈です。分解しないまま、落下しそうです。遊園地付近に落下の可能性が高い。あ、遊園地の客が脱出できなくなってるようです。大型の救出バスを出せば、まだ間に会いますが・・・・・』
『その必要はない。』
『は?』
『必要はないと、言った。』
『え~~~~~!!!』
常務は、そう言い残すと、地下の自室に入った。
いくつかの火の玉が、東京首都圏に突っ込んできた。
また、ハワイの『地球政府首都機関ビル』にも落下してきていた。
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『こちら、東京本社。秘密通信回路。総本社どうぞ。社長?』
『おう。常務。上手くいってるか?』
『まあ、予定通りです。証拠は全部なくなりますよ。すこし、犠牲は大きいが。東京の地球政府『監査庁』は、今、火の海ですな。しばらくは、動けないでしょう。』
『おう。ハワイの『地球政府』も、はでに燃えてるな。地球のコントロールは、こちらでただちに奪取する。少し前倒しではあるし、多少、乱暴にはなったが、これで、『地球』は、わが社の手に入る。『異世界人』との協定は実現される。核廃絶は、これで完成だ。『くず』はすべて消されて、使用可能な『弾頭』は、すでに月基地に移送した。』
『会長は、大丈夫ですか?』
『おう、あの『遊園地』の地下だぜ。運悪く、巻き添えだな。あのステーションには、『異次元転換装置』が乗っていて、地上で爆発した瞬間に作動し、周囲500キロの円内は、地上も、地下も、ものも人も、海も、異世界にがっぽり移動だ。あとは、連中がどうするの、かまでは、おれは知らない。あんた、はやく、脱出したまえ。』
『了解。私の地位は?』
『大丈夫。専務は、そむいたから削除する。殺しはしない。すでに、父親の元に移送済みだよ。あんたが専務だ。次期、社長という訳だ。』
『ども。じゃあ、脱出します。』
その後、東京本社からは、大きな火災を見下ろしながら、小型の高速飛行艇が、飛び去って行った。
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『あ・・・・この、通信機。おあ。なあんと・・・ここにあったか。』
乱暴君が勝手に叫んでいる横では、室長が『町内会通信網』を使って、電話をかけていた。
町内会の範囲にしか使えない、緊急用通信網であるが、単純だったためか、これが生き残っていたのだ。
『・・・『お願いします。よかった。』・・・・なあに、それ?』
『うちの、ボスとの通信機ですよ。無くなってたんだけど、ここに忘れていたんだ。こいつは、災害にも強い、特殊加工品ですぞな。あ、なにか、そっちは、いいことがありましたか?』
『うん。知り合いのバス会社と町内回線で話しが付いた、すぐ、大型空中バス2台が来るわ。間にあうと思う。地上に降ろしてもらって、社員ともども、避難する。本社なんて、無視だわ。』
『おう。よかった。・・・・・・よし。まって、『おおい・・・迷子の迷子のボス。この近くにいるかい?』
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ぼくは、根性を固めていました。
ここで、最後になるとは、意外でしたが。
思えば、あまりうまくゆかない人生でした。
ここから見ていると、なんだか、火の玉が、中心部方面に、いくつか落下しました。
『流しそうめんくん』が、さきほど流してくれた情報では、高空で核爆発があり、さらに『宇宙船』が、落下し始めているとか・・・・・
ぼくらは、地上に戻れなくなっているんだとか。
そうめんの発出も、ぴたりと、止まりました。
まあ、あの『いくら事件』では、結局職場を追われ、その後、乱暴君と始めた自営業は、大きな『功績』も上げたけど、これまた壊滅。暴力的な債権者から逃げ回り、別人を装って、幾十年。借金は、とにかく、なんとか返したよ。
まあ、そうなったものは、仕方がない。・・・・そこに・・・・・
『迷子の迷子のボス・・・・』
とかいう通信が入ったのです。
カバンの隠しポケットに入れたままの通信機です。
二台の通信機間だけしか送受信できない、特殊散乱パルス・デジタル無線です。
見通しが良い場所なら、100キロくらいは楽に飛びます。
違法無線ですが、いまだ、発出源の探査も、解読も出来ない逸品です。
『おおい。乱暴君。久しぶり。どしたの? 出世したかい?』
『どしたの、じゃないですよ。今どこですか?』
『『空中そうめん流し』のカートの中だよ。』
『ええ~~~~~~~~~~~~~!!!!!』
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『なんと、データ偽装して、変装して、乗り込んでましたか。まったくもう。あなたらしいというか、恐ろしやあ、というか・・・』
『なんだ、きみ、ここで、働いてるの? すっごおい、出世だねぇ、』
ぼくは、逆襲の意味で、少しからかいました。
世界最高の天文学者になる、とか、言っていたから。
『どうも。あ、状況をかいつまんで言いますね。・・・・・・・・』
『はあ・・・・・・なるほど。あ、君、知ってる? そこの親会社の社長さんは、『いくら事件』の仕掛け人だったやつだよ。最近になって、わかったんだ。』
『なんと!』
そうなのです、あの、『増殖いくら』を開発した張本人なのです。
ぼくの人生を、はちゃめちゃにした、にっくきやつです。
そうめんにして、食ってやりたいやつです。
どうやら、ここにきて、ついに決着をつけるチャンスが巡ってきたのかもしれない。
『ねえ、乱暴君。アイノちゃんは、生きてるの?』
『アイノちゃん』は、乱暴君が開発した、『超能力コンピューター』ですが、もう、あれから、長い時間が経ちました。
『うごいてますよ。いまも、おじさんとこに置いてますぞな。ここからも、本来ならコントロール可能なのですが、いまは、通信回線が、壊滅です。』
『いま、君が使ったという無線機で、おじさんとこにはつながらないかい?』
『おじさんは、もう110歳ぞな。このところ、耳は遠いわ、話は通じないわで、それに、あそこまでは、遠すぎて、ちぃいと難しいぞな。』
『ふうん・・・・・あの、アイノちゃんと仲良しになった、『幽霊宇宙船』さんがいたろ。普通の通信機にも反応してくれるやつ。』
『おう! そうですね。まって、ううん。いまは、通信可能範囲にいないぞな。でも、2時間したら、真上に来る。そうだ、そうしたら、アイノちゃんに中継してくれるかも。そしたら、『ボス級の幽霊宇宙船』さんたちに、『援助』を依頼できるかも。』
『最近の、人間の活動を評価してくれてればね。』
『おっしゃ。やりましょう。もうすぐ、バスが行くぞな。こんぶ、復活ぞな。』
『コンビ・・・です。』
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*《お詫び》・・・・・・当初の予想より、長くなってきましたので、急遽『後編』の《下》を作る事にいたしました! 次回、最終回です。
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