『空中そうめん流し』 《中編》***** 

 * ひき続き、すべて、フィクションです。


 * 科学的な考察は、行っていません。



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 中央管理センターは、《公園事務所》の最上階にある。


 『プラットホーム』の上である。


 この『遊園地公園』は、とある、世界的大資産家の夢で実現された。


 彼の本業は、まったく違うところにあり、まあ、いわゆる『軍需産業』と呼ばれるものだ。


 西暦2000年代初めの『大混乱期』を過ぎた『過渡期』に登場し、巨万の富を築いたのである。


 しかし、本人は、ずっと、こうした子供も大人も楽しめる、レジャー施設を作ることを、夢見ていたらしいのである。


 お金を出す人も、出さない人も、それなりに楽しめる場所。


 そこで、伊豆半島沖に、重力操作された『人工島』を作り、この公園を作った。


 入場自体は、無料である。


 メインの『そうめん流し』は、それなりの費用を必要とするが、生半可ではないものにしたかった。


 『地球人』の混乱を見かねて(あるいは、見計らって)介入してきた、『異次元からの訪問者』と、密約を交わし、ばか高いアドバイス料金を支払って、地球人には作れない多くの施設を作り上げたのである。


 もちろん、『公園』は、メイン事業ではなかった。


 ある意味、罪滅ぼしでもあった。



  **********  🛰  ********** 



 『異常はない?』


 コントロール・ルームの室長であるカミラは、技師長の『乱暴君』に尋ねた。


 『ええ、順調ですよ。現場に到着。中央タワー上昇中。仕込みも万全。おいしいもの満杯です。』


 『よかった。今日のお客様のお財布は、固そうかな?』


 『そうですなあ。大富豪はいないですね。まあ、中堅どころのご家庭と、引退組と。・・・あと、カップルが少々。あまり、大きな売り上げは期待できませんな。』


 『まあ、平日にしては、利用率は良い方ね。少し、サービスしなさい。』


 『いいんですか? 利益、減りますよお。また、あの、やなやつから叱られる。』


 『いいじゃない。あいつは、ラインじゃない。ここで終わる人。』


 『上昇志向満載のあなたですからね。』


 『遊園地で終わる? あなた?』


 『いやあ、ぼくはそれでいいとか、もともと、思いますよ。ここなら、大きな責任は、そう背負わない。うちの大将も失業中だけど、呼ばれたら、そっちに行くかも。』


 『あ、そう。・・・・・まって、これ・・・なに?』


 見たことがない警告灯が点滅し始めた。


 『あああ・・・こりゃあ、大変だ。かも。』


 『なに?』


 『宇宙空間で、異常なエネルギー感知。本社の『廃棄物処理衛星5号』ですぞな。真上にいる。こりゃあ、危ないぞな。核爆発を誘発するかも。』


 『あの、核廃棄物処理してるらしい、あれね?』


 『そうぞな。ぼくが、政府筋にいる、かつての仲間から、内緒で聞いたところでは、核弾頭そのものが大量に持ち込まれてるとかも、聞いたぞな。』


 『本社なら、知ってるかも。でもまあ、仕方ない、まずは、園長から行くか。顔たてて、やるわ。』


 室長は、園長に電話を掛けた。



 ************   ************



 明るい光に満たされた、伊豆半島から、東京方面。


 時々、赤い光が見える富士山。


 真っ暗な太平洋。


 すばらしい夜景に、すっかり、魅了されていた観客たちのお耳に、大きな声が入ってきました。 


『みなっさあん! さあ、お待ちかね、『中央タワー』が、上がって来ますよお~~~~!!』


 『そうめん流しくん』が叫んだのです。


 すると、大きな輪になって空中に浮いているぼくたちの真ん中の下の方から、むかしの『ICBM』の、先頭部のような、巨大なものが上がってきました。


 ぼくの世代は、間違いなく、ぞっとします。


 こいつのおかげで、人類は、絶滅しかけたのですからね。


 でも、それは、巨大な『屋根』だったのです。


 その下側には、あの、むかしからの遊園地なら、おなじみの『メリーゴーラウンド』のような舞台が現れました。


 でも、そこには、お馬さんとかが並んでいるのではなく、お寿司屋さんとか、お蕎麦屋さんとかの、調理場のような感じになっていました。


 10人ばかりの人たちが、忙しそうに働いています。


 そうして、あの頭の部分からは、まばゆいばかりの照明が降ってきたのです。


 夜景は、あまり見えなくなりました。


 いよいよ、『そうめん流し』が始まるのです。


 『さあて、みなさん。これから、『中央タワー』から、そうめんが『どんどん』と発射されますよお! では、御座席の前の、『そうめんボタン』を押してください。もし押さなくても、30秒経つと、自動で作動しますが、やっぱ、押したいですよね!』


 そらあ、まあ、ボタンというものは、押したくなるものです。


 ぼくは、『そうめん』のマークがある、大きな赤く輝くボタンを押しました。


 すると、『カート』から、二本の腕が伸び出しました。


 その手には、大きな「ひしゃく」が握らてているのです。


 『はい。60分、食べ放題です。いきますよう、ああ。でも・・・・・』


  おっととと・・・・・


 『ちょっと、練習が必要ですよね。8分間練習です。普通は5分ですが、3分サービスです。もちろん、お食べくださって、オッケーですよお! では、行きます。練習! スタート!』


 まあ、練習も本番も、いっしょだよな、とは思いながら、とろいぼくは、出足からつまずきます。


 のわんと! びっくり。


 『中央タワー』から、ばんばん、『そうめん』の固まりが、打ち出されるのです。


 思っていたより、遥かに高速です。


 『あぎゃあ~~~~~!』


 ぼくは、やっとこさ、操作ハンドルを握り、『ひしゃく』で、すくい上げにかかりました。


 最初は、やはり、うまくゆかない・・・


 でも、少しやってると、実は規則性があることに気が付きます。


 そうめんは、いくつかの決まった軌道を通過してゆくのです。


 だから、『ひしゃく』は、あまり動かす必要はなく、一定の場所で構えていると、向こうから、勝手に入ってくれるのです。


 入った『そうめん』の固まりは、通路を通って、『カート』の内部に流れ込みます。


 それを、テーブルの上にある、なかなか、美味しいつゆに付けて、いただくのです。


 『あ、こりゃあ、うまい。さすが、高いだけのことはある。』


 『みなさあ~~~~ん。うまくいってますかあ?もし上手くゆかない場合は、お助けスイッチを押していただくと、係員がサポートに参りまあす。』


 確かに、周囲には、何台かの、空中飛行装置が飛んでいます。


 有人のものも、あるようです。


 『また、お手元のメニューをご覧いただきまして、ご希望の品を、座席前にある、ボードから、ご注文いただけますよお。ただし、別料金ですからね。ご注意ください。はい、練習は、あと3分です。』


 『ふうん・・・・せっかくだからなあ。あ、お寿司もある。うああ、ちょと、高いか。まあ、でも、もう来ないかもしれないし。この『並寿司コース』を行きますか。空中自動車は、自動運転にして、ちょとだけ、いっぱいだけ、お酒と、あと、ああ、てんぷらがある、すごいなあ。びっくりだ。ぎょあ~~~~。まあ、いいか、あ、『お寿司とてんぷらお酒セット』がある。よくできてますなあ。まあ、これでいいや。引退組は、お金がない。と。』


 なんだかんだと理屈をこねながら、それを注文しました。


 『ご注文、いただきました!』


 と、パネルに内容が、表示されました。


 しばらくすると・・・


 『はあい、練習、終了! じゃあ、5分休憩して、本番いきます。気分が悪くなられた方は、ご遠慮なく、お申し出ください。料金分に足りなかったそうめんは、お土産になります。お手洗いご希望の方は、お手洗いマークを押してください。『お手洗いカート』が、参ります。』


 至れり尽くせりですなあ。


 大したもんだ。


 『じゃあ、本番、行きます、よ~~~~~い、すた~~~とお!』


 その、掛け声と共にくらいに早く、『お寿司てんぷらお酒セット』が、空中飛行装置で運ばれてきました。もちろん、これは、無人機です。


 搬入口から、すっと入ってきました。


 『おおお、こんな贅沢、退職以来だなあ。ああ、ちょと、むなしいけれど、楽しいなあ。』


 ぼくは、お酒を、まず、ひとくち、いただきました。


 その瞬間でした。


 はるか上空で、なにかが爆発したのです。



 ********** ●~* **********



『もう、まったく、おばかさんなんだから。話にならないわ。』


 室長は、まったく動く気配もない園長に、かんかんになっていた。


 その、せつな、乱暴君が叫んだのだ。

 

『あああ、大変ぞな。降下しながら、やっぱり、爆発したぞな。こりゃあ・・・・・ものすごい規模ぞな。ツァーリ・ボンバどこじゃない。・・・・あらら、もっと大変。操作不能ぞな。コンピューターくん、ダウン。通信不能。操作不能。・・・まって、一部回復。宇宙空間探査装置だけ作動中。あと、だめ。』


『お客さま、緊急回収よ。緊急!』


『園長は?』


『あの、おばかさん、待ってられないわ。早く。』


『了解、ぞな・・・・・・・ああ、ダメぞな、反応なし。どする? まてまて、なんか、こりゃあえらいこっちゃ。本社の『宇宙管理実験ステーション』が、もろ、被ばくぞな。軌道が下がってる。こりゃあ、こっちも、おちる!』


『おちるって。。。どこに?』


『計算中。・・・・・おわあ! 大当たり。ここぞな。上空の、お客のみな様に、まずは、体当たりぞな! それから、ここ、あたりね。あと、約7時間。』


『うな、ばかな! なんとかしんさい!』


『むちゃですう。相手が悪い!』


『くそ。本社に直に通信かけてやる! 使える無線機とかないの?』


『いやあ・・・・・さがす。ちょと、まってくらさい。こりゃあ、首都方面も、全システム停止ぞな。ブラック・アウトぞな。あちこっち、影響が拡大中。ここも、停電。緊急発電は、第3システムが、なんとか稼働。おおむかしの、発電機。持つのは、5時間だけです。』


『くそ。なんとかしろお。あんたの、大将、どこにいるの?』


『あの人は、役立たずぞな。まあ、でも、おかしな能力は発揮するけど。』


『さがせ、なんとかしろ。こっちも、手立て作る。くそお、これもだめ。・・・』



 人類が、まだやったことのない、大規模な、高高度、核爆発だった。


 しかし、落っこちてくる『宇宙ステーション』のほうが、大問題だった。


 『異世界人』が提供した、危ない、実験システム満載だった。




  ************  🛰  ************




                       後編に、続く・・・・・・・










 































 






   




 













 





 





 









 


  


 


 




 



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